著者
熊倉 俊一
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.210-215, 2008 (Released:2008-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

Point(1)一次性(原発性)と基礎疾患に起因して発症する二次性(反応性)に分類され,二次性HPSの基礎疾患では,感染症,リンパ腫,自己免疫疾患が重要である.(2)発症機序として免疫制御異常が関与している.(3)発熱,汎血球減少,凝固異常,高LDH血症,高フェリチン血症等の所見と骨髄など網内系における組織球の血球貪食像によって診断される.(4)治療は,基礎病態自体の改善と逸脱した免疫制御機構の是正を基本とする.
著者
熊倉 俊一
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.241-251, 2018-09-30 (Released:2019-06-01)
参考文献数
35

血球貪食症候群(HPS)は,網内系におけるマクロファージの血球貪食を病理学的特徴とする難治性疾患である.臨床症状として持続する発熱,肝・脾腫大,リンパ節腫脹,血球減少,凝固異常,肝機能障害,高フェリチン血症などが見られる.HPSは,一次性(遺伝性)と二次性(反応性)に分類され,自己免疫疾患に関連して生じる二次性HPSは,自己免疫関連血球貪食症候群(autoimmune-associated hemophagocytic syndrome, AAHS)と言われる. HPSの診断は,臨床所見と検査所見により総合的に行われるが,自己免疫疾患を基礎疾患とする場合は,自己免疫疾患自体の症状とHPSとしての症状が同一であることがあり,診断の妥当性や信頼性が問題となっている.今後,HPSに特異的な所見による診断基準の策定が求められる. HPSは,しばしば致死的な経過を辿るため,速やかな治療の開始が必要である.AAHSの治療は,ステロイド療法が一般的であり,58%の症例が同療法にて改善する.ステロイド療法無効例には,シクロスポリン療法,シクロホスファミド・パルス療法または免疫グロブリン療法などが実施され,それらの中では,シクロホスファミド・パルス療法の有効性が高い.近年では,TNFまたはIL-6阻害薬などの生物学的製剤の有効例が報告されている.生物学的製剤は,低分子シグナル阻害薬とともに,今後AAHSの治療選択に重要な位置を占めるものと考えられる.