著者
祖父江 元 満間 照典 木全 弘治 寺尾 心一 熊澤 和彦
出版者
愛知医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

平成2,3年度に引き続き末梢神経障害の変性再生過程における神経栄養因子およびその関連分子の発現動態を検討した。本研究により以下のような知見が明らかとなった。1)培養シュワン細胞にCAMPを作用させるとNGFmRNAは増加、LNGFRmRNA,BDNFmRNAは減少の方向に変化した。さらにlaminin B_1、B_2mRNAは増加に、typeI,IIIcollagenmRNAは減少する方向に変動した。これらはシュワン細胞のこれらの分子の産生調節にCAMPが重要であることを示している。2)ヒトの剖検例についてLNGFR,trk,trkBの末梢神経系における発現分布を検討したところ、LNGFRmRNAは広範な発現がみられたがtrkは交感神経、感覚神経細胞体に限局して発現されていた。trkBについては脊髄、末梢神経にも発現がみられた。3)ヒトおよびラットの末梢神経についてLNGERとtrKの発現の加齢変化を検討したが、高齢に至ってもこれらの発現はよく維持されていた。4)培養交感神経感覚神経に対するNGPの作用を検討したがこの両者でneuriteの分岐に対する反応性およびその加齢変化が異なることが明らかとなった。以上の所見は末梢神経障害におけるこれらの分子の発現動態を明らかにするものと考えられるが、今後更にこれらの分子の発現調節に係わる因子の解明や実際のヒト末梢神経障害における役割などについて明らかにして行く必要があると考える。