著者
熊谷 信男
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

チタン合金を高品位・高能率に研削するために、従来の砥石低周速度研削法に代わって、砥粒の熱伝導率が高いダイヤモンド砥石を使用し、研削点に高圧力の注液を行いながら通常(32m/s)の砥石周速度で研削した。この方法で研削した仕上面の品位を解明するために、Ti-6A1-4V合金の焼純材などをプランジ研削した。その結果、砥粒には靱性が比較的高いダイヤモンドが適し、ボンドの砥粒保持力が強力で、砥石表面に研削液が充分に浸入しうる気孔をもつダイヤモンド砥石が適することがわかった。また、砥粒の粒度には最適値が存在する。仕上面品位は、研削液の注液圧力の増加に伴って向上し、圧力2MPaでは、材料除去率が約5mm^3/mm・s以下で砥石の目づまりや研削焼けなどがない加工が可能であり、仕上面直下の残留応力分布は圧縮タイプになる。材料除去率の増加に伴って変質層の深さは増加するが、研削表面に残留応力が発生することは少く、内部のピーク応力は引張り側へ移行する傾向がある。仕上面の性状は工作物速度を速くし、切込みを少なくすると向上する。また、βチタン合金はα+β合金より仕上面の品位が悪くなり難削である。次に、焼純したTi-6A1-4V合金薄板疲労試験片の表裏両面を長手方向に平面トラバース研削して、これを両振り平面曲げ疲労試験を行った。その結果、次のことが明らかになった。疲れ強さは、上述の砥石を使用すると向上して焼純材よりも強化される。また、注液圧力を増加すると向上する。研削液は冷却性が重要であるが、冷却性以外の油性も強さを支配している。水溶性研削液の濃度は、気泡が発生しない範囲で高くするのが良く、供試研削液の中ではW1種1号相当品の10%希釈液の場合に最も高い疲れ限度が得られた。研削によって仕上面に生じる残留応力及び加工変質層は、仕上面粗さ以上に疲れ強さに大きい影響を及ぼす。