著者
熊谷 大輔
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.21-37, 2017-03-21

近年、人口減少や高齢化の進行する地方では小地域福祉活動が活発化してきている。一方、それら活動には継続が困難となる場合も少なくない。これら小地域福祉活動における継続要因は、(1)柔軟な参加と活動の仕組み、(2)利他意識の醸成、(3)人との出会いとつながり、(4)地域への理解と愛着の生成、(5)活動に対する誇りと自信、の5 つの論点にまとめることができる。本論文では、福祉をめぐる「場づくり」を目指すF団体に所属するメンバー6 名に実施したインタビュー調査をもとに、活動の継続要因や望ましい活動のあり方について、5 つの論点との関連性と活動メンバー個々人に生じる変化を踏まえて検証した。そのうち、(1)「柔軟な参加と活動の仕組み」は活動の「条件」に当たるものであり、(2)以降の4つの論点は活動の「成果」に当たるものであり、「成果」の実感と活動「条件」の整備との間には困難な調整が求められることが示唆された。さらに、これら「成果」と「条件」は「一般化」と「特殊なものとの融合」という2 つの志向が影響していると考えられ、活動主体のずれは多様な人びとが活動に参加することによる多様性が増せば増すほど活動主体は個々に異なる方向に純化させようとする考え方を生成しやすいことが示唆された。以上を踏まえると次のように結論づけられる。(1)活動メンバーは「活動の仕組み」以上に「人との出会いやつながり」を重視する傾向がある。(2)したがって、小地域福祉活動の継続には、「共同・実践ありき」と呼ぶべき「活動姿勢」の実現が重要な鍵を握る。(3)さらに言えば、「柔軟な参加態度と活動の仕組み」という最低限の「条件」と活動の多様な「成果」との調整が不可欠である。In recent years, small local welfare activities have increased in depopulation and aging regions.However, most of those activities cannot continued. Through my short bibliographic survey, Iconclude the primary factors of continuation of those activities as follows: 1) organization for flexibleparticipation of members and decision of activities, 2) fostering of altruistic awareness of members,3) encounters with the unknown and connections with members, 4) fostering of understanding ofand attachment for local community, and 5) self-confidence and pride of the activities.Therefore, in this paper I studied the interrelationship between these factors, paying attention topersonal changes of members, through the interviews with six members of Group F which aims tochange the negative image of welfare work in Akita City.At first, I analyze that the first factor corresponds to the activities "conditions," and the otherfour factors correspond to the "results." Consequently, the members of group need to difficultcoordination between the first conditional factor and the other resultant factors. In addition, I findout that in the conditional factor "respect for the peculiarity" is oriented and in the resultant factors"generalization" is valued. Accordingly, I guess the latent conflict between members has beenoccurred from this inconsistency of orientations.Lastly, I conclude as follows : 1) the members of groups tend to make much more of the resultantfactors, especially "encounters and connections", than the conditional factor. 2) this "encountersand connections" factor can be called the activity principle for "cooperative practice". 3) thoughtthis principle the group could solve the conflict between organizational condition and resultant fulfillment of members.
著者
熊谷 大輔
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-14, 2016-03-18

少子高齢化・人口減少社会において福祉への需要は高まっているものの、福祉に対するイメージは都市・地方問わず悪化する傾向にある。しかもその傾向は、今後、福祉を担うことが期待される若年層を中心に広がりを見せている。そこで本論文では、福祉をめぐる「場づくり」を目指すF団体による、福祉と美容を組合せ、参加者どうしの対話を促すイベントへの参加者のうち3名に実施したインタビュー調査をもとに、福祉に対するイメージの転換と主体性が醸成される過程を検証した。まず、当初は世間が抱く一般的な福祉に対するネガティブなイメージの転換に注目していたが、それぞれの参加者が想定する福祉が「従事するもの」か「利用するもの」かにより、イメージが転換する構造に違いが見られた。このうち「従事する福祉」である場合、たしかに世間のネガティブなイメージの内面化が観察されたが、それは福祉に従事すること自体によってもたらされており、単に世間のイメージが問題であるとは言えなかった。他方、「利用する福祉」である場合には、ネガティブなイメージから進んでタブー意識があったりそもそも無関心であったりした。次に、異なるイメージの転換だけでなく主体性の醸成の気づきがあり、しかもそれらが互いに不可分に関連していると考えられた。すなわち「従事する福祉」が想定されていた場合、「相互扶助」や「利他」といった福祉の本来的な魅力の再確認がイメージの転換と主体性の醸成をともに促していた。これに対して、「利用する福祉」が想定されていた場合は、参加者の「自己体験化」が双方の過程で鍵を握っていた。以上を踏まえると、福祉に対するイメージ転換と主体性醸成をともに目指す今後の地域活動においては、福祉が「支え合い」よりも「利用し利用される」ものになっている現実を踏まえ、より「利用者」目線に立った戦略が必要だと言えよう。
著者
熊谷 大輔
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-43, 2015-03-18

少子高齢化・人口減少社会において、財政危機下で増大しつづける福祉需要に対応すべく地域の相互扶助に期待が集まっている。しかし都市・地方問わず、地域の人間関係の希薄化と福祉イメージの悪化が進んでおり、地域や福祉に対する無・低関心層の巻き込みは容易ではない。そうした無・低関心層と地域や福祉を結びつける試みとして注目されているのが「場づくり」である。「場づくり」とは、多様な人びとの自由な相互作用を促すハード・ソフト両面の環境を生み出すことである。そこで本報告では、福祉をめぐる「場づくり」を目指すF団体による、福祉と美容を融合させ参加者どうし対話を促すイベント(2013年11月30日)を取り上げ、参加者に対するアンケート調査をもとに、「場づくり」の効果と参加に至る認知経路を検証した。まず、認知経路としては、認知においてもまた参加の契機においても、「友人・知人」が有意に多かった(認知の7 割、参加の5 割)。とりわけ、組織所属3 年以上の者で、そうした傾向が強かった。効果については、参加前後で福祉イメージの変化が見られた者が6 割を超え、自由回答からその変化はポジティブなものだと推測された。さらに、「友人・知人」を介した参加者においてその傾向が強まっていた。また、福祉イメージがポジティブに変化した者の8 割が、今後地域活動を希望すると回答していた。この結果から、認知・参加を促すうえでも福祉イメージの転換を図るうえでも重要だということが確認された。ただし、「友人・知人」という認知経路の有効性はその後の当事者にとっての有効感に左右されるという知見もあり追跡調査が必要である。また、福祉イメージの転換が福祉を支える「つながり」や主体の形成を現実にどう帰結しうるのかも今後の検証が求められる。