著者
中江 啓晴 熊谷 由紀絵 小菅 孝明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-4, 2014 (Released:2014-07-22)
参考文献数
16

【緒言】眼瞼痙攣(眼瞼攣縮)は眼輪筋,皺眉筋など眼瞼運動に関与する筋肉の不随意の収縮により開瞼が困難となる状態で,局所性ジストニアに分類される。【症例】患者は61歳女性,半年前から出現した眼の違和感を主訴に当科受診。眼瞼痙攣と診断,柴胡加竜骨牡蠣湯の内服を開始したところ改善傾向となり,少量の芍薬甘草湯を追加したところ更なる改善が得られた。患者の希望により芍薬甘草湯を増量し芍薬甘草湯単剤投与に変更したところ症状が悪化,以前の処方に戻したところ改善が得られた。【考察】眼瞼痙攣を含む頭部ジストニアの発症機序として中枢神経系にある基底核運動ループの障害が提唱されている。柴胡加竜骨牡蠣湯は中枢神経系に作用すると推測されることから眼瞼痙攣を改善した可能性がある。【結語】柴胡加竜骨牡蠣湯の眼瞼痙攣に対する有効性が示唆された。
著者
中江 啓晴 熊谷 由紀絵 小菅 孝明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.104-107, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
12

アルツハイマー型認知症は認知症の半数を占め,認知機能障害が徐々に進行する。半夏白朮天麻湯をアルツハイマー型認知症患者に投与し,その有効性を検討したので報告する。対象はアルツハイマー型認知症患者72例。初診時に全例に改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)を実施した。同日から半夏白朮天麻湯エキスの内服を開始し,4週間後にHDS-R で再評価を行なった。評価可能であった患者は72例中64例であった。64例の内訳は年齢79.9±6.0歳(63-89歳),性別は男性33例,女性31例であった。半夏白朮天麻湯エキス投与前のHDS-R は15.5±5.2点であり,投与4週間後のHDS-R は16.9±6.2点と有意に改善を認めた(p < 0.01)。家族の目から見て認知機能が改善したものは13例(20.3%)であった。半夏白朮天麻湯のアルツハイマー型認知症の認知機能障害に対する有効性が示唆された。
著者
中江 啓晴 小菅 孝明 熊谷 由紀絵 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.131-136, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

パーキンソン病患者の便秘に対する麻子仁丸の有効性を検討した。対象は便秘のあるパーキンソン病患者23例。 麻子仁丸を投与し1ヵ月後に効果の有無を確認した。効果判定は排便の頻度で行い,排便の頻度が増加したものを有効,変化がなかったものを無効,低下したものを悪化とした。以前から下剤を内服していたものについては麻子仁丸に切り替え,同様に判定した。有効率は全体では78.3%,悪化例はなかった。副作用を認めたものは13.0%でいずれも下痢であった。以前に下剤を内服していなかった15例では有効率86.7%,以前から下剤を内服していた8例では有効率62.5%であった。麻子仁丸は下剤を内服していなかった患者に対して高い有効率を示し,また以前から下剤を内服しているが効果が不十分な患者に対して便秘を悪化させることなく切り替えることが可能であった。 麻子仁丸はパーキンソン病の便秘に対して適切な処方の一つと考えられた。