著者
有尾 啓介 水田 敏彦 八田 美幸 熊谷 貴文 河口 康典 江口 有一郎 安武 努 久富 昭孝 尾崎 岩太 藤本 一眞
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.658-662, 2005-11-25

症例は13歳の男児. 海岸でアメフラシ (学名<i>Aplysia kurodai</i>) の卵を生で摂取後, 持続性の嘔吐と肝機能障害が出現した. 入院時 (摂食後3日目) AST661IU/<i>l</i>, ALT1186IU/<i>l</i> と肝障害がみられ, ウイルスマーカー陰性で, 他に肝障害を起こしうる原因がないことからアメフラシの卵の摂取による急性肝障害と診断した. 安静, 輸液, グリチルリチン製剤静注により自覚症状, トランスアミナーゼ改善し, 併発症なく入院18日目に退院となった. 肝病理組織では散在性に肝細胞の巣状壊死とリンパ球, 好中球の浸潤を認めた. 水棲生物の中には外敵から身を守る生体防御機構としての有害物質を保有しているものがいる. アメフラシは日本中の海岸のいたるところに生息し, その卵塊は一見摂食可能な印象を受けるが, アプリシアニンという毒性物質を含有しており, 摂食により肝障害を起こす可能性がある.