著者
齋藤 彬夫 大河 誠司 熊野 寛之
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ダイナミック型氷蓄熱システムにおける,細氷貯蔵時の氷充填層の透過率変化と圧縮に伴う特性変化について検討を行った.試料には,削氷機で細かくした後,ふるいで選定した氷粒子を使用した.0.5〜1.0mm,1.0〜1.7mm,1.7〜2.8mm,2.8〜4.0mmの4種類の氷粒子を,円筒管に充填し,0℃の貯蔵層内に24時間保持し,貯蔵前後での充填層の透過率の測定を行った.貯蔵前の空隙率と透過率の関係は,Kozeny-Carmanの式により表されること,また,貯蔵後の空隙率は減少するものの,透過率は逆に増加する傾向にあることを明らかとした.これらの傾向を評価することを目的として細氷形状の顕微鏡観察を行うことにより,貯蔵により透過率が増加した原因は,Kozeny-Carmanの式中に使用される試料層中の流路のねじれに関係する係数であるKozeny-Carman定数が減少したためであることが分かった。さらに,氷水充填層では浮力に伴う圧縮力が氷に作用することから,細氷充填層に荷重をかけることにより,その充填層の圧縮特性と透過率変化について検討を行った.その結果,荷重有無に関わらず,いずれの粒子径においても,空隙率に違いはあるものの空隙率と透過率の関係が同じ係数を用いたKozeny-Carmanの式と良い一致を示していることから,貯蔵後の透過率は,荷重の有無に依存せず,空隙率で決定されることがわかった.以上の結果を踏まえ,荷重の大きさによる空隙率の変化と,その空隙率から貯蔵前後の透過率変化が予測可能であることがわかり,貯蔵直後では空隙率の減少により透過率が減少するものの,貯蔵後半に氷粒子の形状変化などに伴い透過率が増加する特徴的な現象を把握することができた.さらに,実機における貯氷タンクを想定してシミュレーションを行い,貯蔵に伴う細氷充填層の特性を把握を行った.