著者
片山 友子 水野(松本) 由子
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.657-664, 2016 (Released:2017-01-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

総務省の調査によると、20代のインターネット利用は99%を超え、スマートフォンでの利用は約88%となっており、スマートフォンの使用者は急増している。インターネットは情報収集やコミュニケーションのツールとして利便性が高いが、一方で、インターネット依存が心身に悪影響を与える可能性が指摘されている。本研究では、スマートフォンの利用率が高い大学生を対象に、インターネット依存傾向のある者の健康度および生活習慣、気分状態の関連性について検討を行った。 インターネット依存傾向尺度による分類から、インターネット依存傾向群をⅠ群、非依存群をⅡ群とする2群に分類した。この2群について、心身の健康および生活習慣、気分状態の調査を行い、その特徴を分析した。 調査の結果、対象者156名中、Ⅰ群は58%、Ⅱ群は42%であった。Ⅰ群はⅡ群と比較すると、身体的健康度、精神的健康度、睡眠の充足度が有意に低値を示した。Ⅰ群は、睡眠不足のため、昼間に眠たくなり、勉強がスムーズにはかどらず、大学生活に影響を及ぼしていることが示唆された。また、就寝時間が遅くなることから夜食の習慣化が生じ、目覚めの体調不良から朝食の欠食などがみられ、イライラ感や肥えすぎ・やせ過ぎなどにも繋がると考えられた。心理検査では、Ⅰ群はⅡ群と比較すると、不安感、抑うつ感、イライラ感がつのっていることが分った。これらの結果から、ネット依存傾向のある者は、睡眠習慣と身体的および精神的健康に相互に悪影響を与える可能性が示唆された。さらに、Ⅰ群の約65%にインターネット依存傾向があることを自覚しているが、約17%には自覚がなく、依存傾向が進行する可能性が示唆された。 依存が深刻化する前に予防教育を行い、インターネット依存が生活習慣や心身の健康に与える危険性について啓発することが重要であることが示唆された。
著者
片山 友子 水野(松本) 由子 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.283-293, 2014
被引用文献数
1

厚生労働省は、国の医療対策において特に重点を置いているがん、脳卒中、心臓病、糖尿病の四大疾病に、近年患者数が増えている精神疾患を加え、2011年に、五大疾病とする方針を決めた。健康は身体的、精神的な要因から考慮される必要がある。本研究では、大学生を対象に、食事、睡眠、運動などの基本的生活習慣とストレスなど個人のメンタルヘルスに関する意識調査を実施し、生活習慣とメンタルヘルスの関連性について検討を行った。<br> 健康度・生活習慣のパターンの判定から、充実型、生活習慣要注意型、健康度要注意型をI群、要注意型をII群とする2群に分類した。この2群について、心理検査と質問紙を用いて、気分状態および心身の健康と生活習慣の調査を行った。<br> その結果、I群は、うつ傾向が低値を示し、II群と比較すると、ストレスがあると答えた者は少なく、平均睡眠時間は長く、食生活、栄養バランスなどの生活習慣の良いことがわかった。また生活習慣が望ましい状態にあると、気分状態が安定し、活動性が高いと考えられた。II群は、心理検査では憂うつだと感じている者が多く、さらに不安と不眠が高値を示した。また、I群と比較すると、食生活に問題があり、栄養バランスを考えて食事を摂っていないこと、平均睡眠時間が短いこと、ストレスがあり、さらにストレス対策方法がある者の割合が低いということがわかった。II群は、抑うつが強く、気分状態が悪く、活動性が低いと考えられた。<br> 大学生などの比較的若い世代は、健康問題が出現することは少ない。しかし、生活習慣は長い年月をかけて、徐々に形成されていくものであることから、長年にわたる生活習慣を変えることは困難である。したがって、若い年代から健康を意識した生活をし、健康な生活習慣を身につけることは、将来の生活習慣病への予防にも繋がり、青年期から壮年期、さらに老年期における健康生活を送るために、きわめて重要なことである。