著者
本村 敏明 日高 哲志 秋濱 友也 片木 新作 BERFOW Mark a. 森口 卓哉 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.685-692, 1997-03-01
参考文献数
25
被引用文献数
6

カンキツ類縁種には病害虫抵抗性等の有用遺伝子を有するものが多く,育種素材としての活用が期待されている.しかし,カンキツとの類縁関係が遠くなると交雑は困難となる.これを克服する手段として細胞融合が考えられる.ここでは細胞融合法の適用限界を知るために,カンキッとカンツ類縁種の電気融合を行い,融合後の胚様体の発育について調査を行った.<BR>材料には,ミカン亜科カンキッ連のトリファシァ亜連,カンキツ亜連(カンキツを含む),バルサモシトラス亜連およびワンピ連のワンピ亜連とメリリア亜連内の種を用いた.<BR>一般的にカンキッと分類的に近縁な組合わせにおいて雑種個体の作出が容易であった.カンキッ連カンキッ亜連内のカンキッと他の種との電気融合では,多くの組合わせで融合後の胚様体形成,シュートの再分化,発根が容易であった.カンキツとカンキツ連バルサモシトラス亜連の電気融合では,比較的シュートの形成は容易であった.しかしながら,その発根は困難なために,接ぎ木したところ,一部は植物体にまで生長したが,奇形葉を呈するものも多かった.ワンピ連との組合わせの電気融合では,個体再生は極めて困難で,分化しても異常な個体しか得られなかった.カンキッとカンキッ連トリファシア亜連との電気融合では,カンキツとワンピ連よりも類縁関係が近いにもかかわらず個体再生は困難であり,体細胞雑種作出の可能性は低かった.
著者
鈴木 鉄男 岡本 茂 片木 新作
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-328, 1977
被引用文献数
3 1

温州ミカン幼樹を供試して, 5月から8月にかけてチッ素施用量を変えることにより, 葉中N含量に差をつけた場合の, 果実の肥大•品質に及ぼす影響を調査し, 品質向上の面からみた夏秋季の適正なる葉中N含量を明らかにしようとした.<br>1. チッ素施用後, 葉中N含量に変化が現われるのは10~15日後であつた. そして5月下旬以降12月上旬にかけて, 葉中N含量はチッ素施用量をよく反映し, 9月3日の葉分析では, N<sub>0</sub>区2.08%, N<sub>1</sub>区2.78%, N<sub>2</sub>区3.21%, N<sub>3</sub>区3.40%, N<sub>4</sub>区3.73%を示した. K含量はN<sub>0</sub>区で明らかに高く, Nと拮抗的関係がみられた. CaとMg含量は高N区で低い傾向があつた. なお, 9月11日に果実中N含量を分析したところ, 葉分析の結果と全く同じ傾向が得られた.<br>2. 葉色指数に差が現われたのは6月上旬からであり, 7月上旬頃からその差が明確となり, N<sub>0</sub>区は淡緑色で, N<sub>3</sub>, N<sub>4</sub>区は濃緑色を呈した. そして, N<sub>0</sub>区では8月上旬頃から古葉の黄変, 落葉が始まり, 幼果の果皮も淡緑色を呈し, 樹勢は著しく衰弱した. なお, 葉色指数と葉中N含量の間には高い正の相関 (<i>r</i>=0.823**) があり, 葉中N含量とクロロフィル含量の間にもかなり高い正の相関 (<i>r</i>=0.695**)があつた.<br>3. 果実収量はN<sub>3</sub>区が最もすぐれ, N<sub>4</sub>, N<sub>2</sub>区がこれに続き, N<sub>0</sub>区は明らかに劣り, 平均果重でも同様の傾向があつた. 果形指数は区間に差がなかつた. 果皮の着色指数はN<sub>1</sub>, N<sub>2</sub>区で最高を示した. これに反してN<sub>0</sub>区では着色は早くから始まつたが, その後, 次第にチッ素施用区に追いつかれ, 橙色に乏しく, 採収果の着色指数も低かつた. 果皮歩合はN<sub>0</sub>区で低く, チッ素施用量が増すにつれて高くなつた. 果汁中の可溶性固形物含量はN<sub>0</sub>, N<sub>1</sub>区で明らかに高く, N<sub>2</sub>以上では低下するようであつた. クエン酸含量には有意差は認められなかつたが, 傾向としてはN<sub>0</sub>とN<sub>1</sub>区でやや高かつた. 甘味比には差がなつた.<br>以上の結果から, 品質向上の面からみた夏秋季の葉中N含量の適正値は, N<sub>1</sub>区での2.6~2.8%付近にあると考えられる.