- 著者
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鈴木 鉄男
岡本 茂
片木 新作
- 出版者
- 園藝學會
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.4, pp.323-328, 1977
- 被引用文献数
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温州ミカン幼樹を供試して, 5月から8月にかけてチッ素施用量を変えることにより, 葉中N含量に差をつけた場合の, 果実の肥大•品質に及ぼす影響を調査し, 品質向上の面からみた夏秋季の適正なる葉中N含量を明らかにしようとした.<br>1. チッ素施用後, 葉中N含量に変化が現われるのは10~15日後であつた. そして5月下旬以降12月上旬にかけて, 葉中N含量はチッ素施用量をよく反映し, 9月3日の葉分析では, N<sub>0</sub>区2.08%, N<sub>1</sub>区2.78%, N<sub>2</sub>区3.21%, N<sub>3</sub>区3.40%, N<sub>4</sub>区3.73%を示した. K含量はN<sub>0</sub>区で明らかに高く, Nと拮抗的関係がみられた. CaとMg含量は高N区で低い傾向があつた. なお, 9月11日に果実中N含量を分析したところ, 葉分析の結果と全く同じ傾向が得られた.<br>2. 葉色指数に差が現われたのは6月上旬からであり, 7月上旬頃からその差が明確となり, N<sub>0</sub>区は淡緑色で, N<sub>3</sub>, N<sub>4</sub>区は濃緑色を呈した. そして, N<sub>0</sub>区では8月上旬頃から古葉の黄変, 落葉が始まり, 幼果の果皮も淡緑色を呈し, 樹勢は著しく衰弱した. なお, 葉色指数と葉中N含量の間には高い正の相関 (<i>r</i>=0.823**) があり, 葉中N含量とクロロフィル含量の間にもかなり高い正の相関 (<i>r</i>=0.695**)があつた.<br>3. 果実収量はN<sub>3</sub>区が最もすぐれ, N<sub>4</sub>, N<sub>2</sub>区がこれに続き, N<sub>0</sub>区は明らかに劣り, 平均果重でも同様の傾向があつた. 果形指数は区間に差がなかつた. 果皮の着色指数はN<sub>1</sub>, N<sub>2</sub>区で最高を示した. これに反してN<sub>0</sub>区では着色は早くから始まつたが, その後, 次第にチッ素施用区に追いつかれ, 橙色に乏しく, 採収果の着色指数も低かつた. 果皮歩合はN<sub>0</sub>区で低く, チッ素施用量が増すにつれて高くなつた. 果汁中の可溶性固形物含量はN<sub>0</sub>, N<sub>1</sub>区で明らかに高く, N<sub>2</sub>以上では低下するようであつた. クエン酸含量には有意差は認められなかつたが, 傾向としてはN<sub>0</sub>とN<sub>1</sub>区でやや高かつた. 甘味比には差がなつた.<br>以上の結果から, 品質向上の面からみた夏秋季の葉中N含量の適正値は, N<sub>1</sub>区での2.6~2.8%付近にあると考えられる.