著者
片桐 一元
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.94-98, 2014-04-10

要約 多形慢性痒疹は掻痒が強く,難治であるため皮膚科外来診療の中では最も避けたい疾患の1つとされている.筆者は多くの同症患者の診療を通じて独自のステップアップ式治療アルゴリズムを作成し,実際の診療に用いている.原則的に十分量の外用を試み,単剤の抗ヒスタミン薬,ロラタジン(クラリチン®)とオロパタジン塩酸塩(アレロック®)を中心とした抗ヒスタミン薬の2剤併用,マクロライド系抗菌薬の追加,紫外線照射もしくはシクロスポリン内服とステップアップする.自験例102名の解析では68%は抗ヒスタミン薬の2剤併用で,92%はマクロライド系抗菌薬の追加までで安定した状態となった.難治性疾患に対して明確な治療ステップを準備することは,苦痛の強い患者に安心感を与えるだけでなく,医療者にも余裕を持たせてくれる.また,本疾患の治療アルゴリズムは他の痒疹やアトピー性皮膚炎治療に応用することも可能であり汎用性を有している.
著者
片桐 一元 倉橋 理絵子 波多野 豊
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.Suppl.12, pp.B690-B694, 2009 (Released:2012-04-18)
参考文献数
9

慢性ストレスにより皮膚バリア機能回復障害が誘導され,glucocorticoidsがそのメディエーターとされている。今回,我々は,急性ストレスによる皮膚バリア機能障害について解析を行った。12時間の過密環境での飼育ストレス負荷により,皮膚バリア機能の回復障害が生じた。あらかじめ機能的除神経を施したマウスでは,ストレスによる影響が消失した。さらに,サブスタンスPの皮内投与により皮膚バリア機能回復障害が生じた。以上の結果より,急性ストレスでは末梢神経機能を通じて皮膚バリア機能回復障害が誘導されることが明らかとなり,サブスタンスPが有力なそのメディエーターであると予想される。