著者
盛山 吉弘 岩本 和真 片桐 正博 結束 怜子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.115-119, 2018-03-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

皮膚軟部組織感染症(skin and soft tissue infection:SSTI)は単一の疾患ではなく,多種の異なる疾患が含まれている.膿性の浸出液や膿瘍腔がみられない蜂窩織炎は,血液培養,穿刺等による局所培養のいずれも検出率は低く,直接的に起因菌を同定できないことが多い.蜂窩織炎の主な起因菌は,β 溶血性連鎖球菌(β-hemolytic Streptococcus:BHS)と考えられているが,これは血清学的検査および抗菌薬への反応性による.一方,膿性の浸出液や膿瘍腔がみられるSSTI(purulent SSTI)では,近年,市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus:CA-MRSA)が最も多く検出されると報告されている. Purulent SSTI と蜂窩織炎は別の疾患であり,米国のガイドラインには重症例を除く蜂窩織炎の初期治療にCA-MRSA を対象とする必要はないことが記載されている.しかし,蜂窩織炎の起因菌が不確実であるという医療者の不安から,実際には抗MRSA 薬を含めた広域の抗菌薬が,蜂窩織炎に対しても乱用され,問題となっている. これらの検討は主に米国でなされてきたが,我が国ではどうであろうか.今回自施設の症例を,前向きに集積して検討を行った.101 症例のうち,BHS の関与は60 例(59.4%)で確認された.また,101 症例全例で,CA-MRSA に対する抗菌薬は不要であった.