著者
大澤 啓志 勝野 武彦 片野 準也
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.188-197, 2001-02-28
被引用文献数
14 11

本研究では, 神奈川県東部の都市河川(柏尾川)で旺盛に繁茂しているレッドリスト掲載種ミズキンバイ(アカバナ科)について, その生態的特徴を明らかにした。月別の現存量の変化より, 本種の生活環として5〜8月の直立型の成長期, 9〜10月の匍匐茎による横方向への増殖期, 11〜1月の衰退期が明らかになった。開花は5〜12月に見られたが, 特に初夏に最も多くの着花数が認められた。分布は中流部の約6kmの範囲であり, 1998年の総生育量(植被面積)は約1,500m^2であった。確認された44地点の群落のうち25地点では, 中洲のほとんどを占有していた。水面上に広く葉を拡げる群落景観は, 水面から緩やかにつながる淡緑色の中洲・寄洲を形成し, 柏尾川の河川景観を特徴付けている。群落内の種構成を比較した結果, 群落遷移から考えてメリケンガヤツリ・ミゾソバの出現頻度の多少により遷移の初期型・後期型に区分された。さらに, 草丈の高い植物の侵入により本種の群落は減少すると思われる。