著者
牛山 恵
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.53-62, 1995-08-10

「猫の事務所」に描かれているのは、官僚機構の中で起こった集団のいじめである。それらは、今日、学校で日常的に行われているいじめと同質ではないか。いじめる猫たち、いじめられるかま猫、ともに存在にはリアリティがある。読み手は、猫の事務所という仮想空間に、己れの現実を見る。だからこそ、いじめの解決が問題となるのだ。それを一挙に解決した獅子の登場にはどのような意味があるのだろうか。それらを通して賢治童話の批評性について考察したい。
著者
牛山 恵
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.37-47, 1986-07-10 (Released:2017-08-01)

中学校一年生を対象に「鹿踊りのはじまり」を実践した。方言のふんだんに出てくる作品だが、それがかえって作品世界に生徒をさそい込んでいった。そして生徒は、主人公の嘉十が鹿と同化し、その言葉を理解することができたものの、結局自然からは拒絶される存在であったという「読み」を展開した。鹿の視点に立って日常生活から失われてしまった感覚を体験するとともに、嘉十の疎外感に共感していったのである。この実践は「イメージの世界に遊ぶ」という虚構の体験の成立をめざしたものである。