著者
牧野 勲 篠崎 堅次郎 芳野 宏一 中川 昌一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.690-702, 1975 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25
被引用文献数
6

Cholesterol 胆石症11名にUDCA1日450mgから2gを4カ月から1年半長期投与し, 臨床症状, 胆嚢造影, 肝機能検査の経過を観察した. その結果, 患者11名中胆石の完全消失1名, 胆石個数の減少又は胆石陰影の縮少3例, 判定保留1例, 残り6例は不変であつて有効率約37%であつた. 一方, 今回の比較的大量のUDCA投与によつてほとんど全例にそれ迄高頻度に持続した右季肋部痛, 右背部痛の消失が認められ, 自覚症状の改善を認めた. この間肝機能検査に異常なく血中 Cholestreol も正常値を保持した.患者11名中3例についてUDCA投与前後の胆汁中脂質が分析されUDCA投与前 Cholesterol 過飽和の胆汁はUDCA投与後, そのLithogenicity が改善された. 一方, 胆汁中胆汁酸分析ではUDCA投与後総胆汁酸の40%以上がUDCAで占められCDCAと合計すると Dihydroxy 胆汁酸は, 約80%に達したがLCAも軽度増加するのを認めた.
著者
牧野 勲
出版者
旭川医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素系の役割とその特性について研究実施計画に沿って検討し、下記の成果を得た。1.赤血球内ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特性に関する検討。酵素の部分精製はBerseusの方法に従って実施し、現在も進行中である。本酵素系の特質については試験管内実験から、(1)至適温度は37〜40℃、(2)至適pHは7.0、(3)ケト胆汁酸の還元能はC3位のケト基にのみ限定される、(4)肝における3αーHSD酵素とは作用が類似するも同一でない、(5)70℃、2分間の加熱で失活することを明らかにした。2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製。デヒドロコ-ル酸の経静脈負荷試験から検討を加えた。従来デヒドロコ-ル酸はその全てが肝で還元代謝を受け、胆汁中ヘモノハイドロキシ体20%、ダイハイドロキシ体70%、トリハイドロキシ体10%となってい排泄されると考えられて来た。したし本研究によりデヒドロコ-ル酸はその一部が大循環血中で赤血球によりC3位のケト基が還元され、モノハイドロキシ体となり、その後肝に摂取されて代謝を受ける副経路が存在することを明らかにした。その程度は負荷量の10ー20%に及ぶため、本副経路は生理的意義を有するものと判断された。この場合、上記成績はデヒドロコ-ル酸および代謝還元体の肝摂取速度を度外視したものであり、したがって20%以上のデヒドロコ-ル酸が本副経路を経由することが考えられ、現在詳細な検討を行っている。3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討。これ迄施行した血中胆汁酸分析で、末梢血中に3ケト胆汁酸を認めなかった。本所見から腸管内で3ケト胆汁酸が生成され、それが循環血中に流入しても、赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素により速やかに、3αハイドロキシ体に還元されることが推察された。