著者
牧野 正人 万木 英一 阿部 重郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1923-1928, 1988
被引用文献数
8 6

マムシ咬傷の治療にセファランチンが有効とされてから,抗血清は必要ないとする報告が多いため,今回,抗血清の使用の効果について検討した.<br>昭和53~62年の10年間に114例のマムシ咬傷症例を経験したが,その約80%は7~9月の期間に発生し,年次別では斬減の傾向であった.死亡例は2例であった.<br>抗血清使用例では腫脹の範囲も狭くかつ霧視などの全身症状合併率も非使用例の65%にくらべ有意に低く13.8%であった.さらに,治療日数をみても使用例で有意に短かった.また, LDH, GOTの異常値は腫脹範囲と相関して認められたが,抗血清使用例の方が異常値を示す割合いも少なくかつ軽度であった.<br>また, 3時間以内にマムシ抗毒素血清による治療がなされれば,全身症状合併率は低く,腫脹範囲も軽度のものが多かった.<br>以上より,マムシ咬傷の治療は抗血清の投与が望ましいと考えられた.