著者
犬塚 則久
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.239-245, 2014 (Released:2017-05-11)
参考文献数
8

The spinal column of a human body must support the weight of the upper half of the body including the head and the upper limbs, befitting to the bipedal upright posture. Vertebral bodies of the lower lumbar are larger than the upper one for this support. Since the ventral side of the spinal column has a thorax, cervical and lumbar lordoses are indispensable to bring the center of gravity close to a centroidal line. Therefore, the thickness of the inferior lumbar vertebrae are greater ventrally, and an intervertebral disk is thick, and wedge-shaped. Since the weight shifts forward and backward as to the standing and the sitting position, the angle of a pelvis must be changed, and a sacrum and lumbar vertebrae cannot be unified. The lumbar vertebrae at the time of a walk should take the rotational shear, between an upper-limb-thorax block and a lower-limb-pelvis block, since they can hardly rotate due to the dissociation of the center of the rotary axis and the actual center of the vertebral bodies. The situation results in propensity for disk herniation or compressive fractures.

1 0 0 0 OA 肩帯の進化

著者
犬塚 則久
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.391-404, 1992 (Released:2008-02-26)
参考文献数
63
被引用文献数
1 3

鎖骨は特異な骨である.例えば,真獣類のからだの骨では唯一の皮骨性骨である.哺乳類の中で退化したものと発達しているものとがある.ヒトの鎖骨は二重弯が最も強い.骨化点出現は早いのに胸骨端の癒着は肢骨の中で最も遅い.これらの理由を探るため,肩帯の進化を比較解剖学的および機能形態学的観点から検討した.皮骨性肩帯は四足動物では全般に退化傾向にある.皮骨性肩帯の実体は皮骨性頭蓋の後縁であり,鎖骨はその最後の名残である.肩帯と腰帯は相同物ではなく,側方型体肢をもつ四足動物の祖先が獲得した相似形象である.体肢が側方型から下方型へ転換したのは,足の接地点を重心に近づけるためで,この結果,肘は後ろ,膝は前に回転することになった.これが哺乳類における前•後肢の形態差の発端で,肢帯や基脚の逆傾斜,肘•膝•踵の出現を説明する.哺乳類の肩帯は『自由肢化』し,走行性哺乳類では肩甲骨の自由肢化が鎖骨の退化を促した.一方,樹上性哺乳類では鎖骨が自由肢化し,新たな機能を獲得したために,皮骨性肩帯の退化傾向から一転して発達するようになった.樹上性類人猿では体を支えていた鎖骨は,直立した人類では逆に上肢を支えるように機能転換する.ヒトでは上肢の支持は鎖骨と僧帽筋との協同によってなされるたあ,鎖骨には均等に圧力がかかるようになる.ヒトの鎖骨の形態は,このようなヒト独自の機能から説明されるべきである.二足歩行の動的安定性を維持するのに,上下肢の質量とモーメントアームの長さの調節が欠かせない.質量よりは長さによる調節のほうが容易なので,鎖骨の骨端閉鎖期の遅れは,上肢のモーメントアーム長の調節に貢献しているだろう.
著者
犬塚 則久 笹川 一郎 吉岡 敏雄 高橋 正志
出版者
歯科基礎医学会
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.552-561, 1979

従来, 長鼻類の脱落した臼歯に関する記載が乏しかったので, その形態的特徴を明らかにするためにおこなった。<BR>アジアゾウ4頭からえられた臼歯11点について, 計測, 記載した。<BR>脱落歯の特徴は, 咬板数が少ない, 歯冠長が短い, 歯冠高が低い, 歯根が吸収されている, 近心の咬合面が滑らかで, 象牙質彎入が浅い, エナメル摺曲が不明瞭で, 遠心面の接磨面が広い点にある。<BR>歯根の吸収は, 遠心より近心, 中央部より頬舌両側, 上顎歯では頬側, 下顎歯では舌側の方が対側より顕著である。<BR>脱落歯のなかには, 3年間で歯冠高が14-15mm減少した例 (P1. I, 1-4) がみられた。また, 通常は近心から脱落するはずの臼歯において, 遠心の咬板の一部が3カ月早く脱落した例 (P1. 1, 5-7) がみられた。