- 著者
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犬飼 博子
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.11, pp.1233-1239, 1998-11-15 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
2
子どもの運搬の身体的負担を明らかにするために, (1) 子どもの運搬方法の野外調査, (2) 心拍数, エネルギー代謝率測定, (3) おんぶ, だっこについてのアンケート調査を行った.これらの実験, 調査を通して「子どもを運搬すること」を総合的にとらえることを試みた.結果を要約すると以下のとおりである.(1) 東京駅構内の野外観察から, 屋外の移動において, 最も頻度の高い子どもの人力運搬方法は, だっこ (腕・子守帯) 203例 (78.1%) であった.(2) おんぶは17例 (6.5%) 観察された.すべての事例において, 子守帯が用いられていた.(3) 子どもを運んで移動するエネルギー代謝率は, だっこ (腕) 3.7±0.34, だっこ (子守帯) 3.1±0.32となり, 比較的重い作業だった.(4) おんぶ (子守帯) で移動する場合のエネルギー代謝率は, 2.8±0.28で, だっこよりも身体負担が軽かった (分散分析の結果p<0.01で有意).(5) 立位実験でのおんぶ (子守帯) の心拍数は, だっこより上昇した.これは, おんぶの用具の装着が困難なためと考えられる.(6) おんぶ (子守帯) は, だっこ (子守帯・腕) に比べて身体負担が軽いけれども, 実際の生活ではあまり行われていないことがわかった.(7) だっこ (腕・子守帯) は, 身体負担が重いのにもかかわらずよく行われていることも明らかになった.(8) アンケート調査では, ベビーカーの普及が高かったが, 人力運搬方法では腕によるだっこ, 次いで子守帯によるだっこが多かった.これは野外調査と一致する.疲れを感じる身体部位も腕によるだっこでは腕, 子守帯を使っただっこ・おんぶでは肩が多かった.(9) 研究結果から, おんぶの見直しを含むいくつかの今後の課題を得た.