著者
猪八重 涼子 深田 博己 樋口 匡貴 井邑 智哉
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.247-263, 2009

本研究では, 裁判員裁判を想定した状況設定を行い, 質問紙実験によって, 裁判員を演じる実験参加者の判断に及ぼす被告人の身体的魅力の影響を検討した。独立変数は, 被告人の身体的魅力(高, 低), 被告人の性(女性, 男性), 実験参加者の性(女性, 男性)の参加者間変数であり, 従属変数の測定は事後測定計画であった。実験参加者は, 219名の大学生であり, 印刷された裁判資料を読んだ後, 質問紙に回答した。被告人の身体的魅力は, 裁判員の課す量刑を軽くすることが示された。そして, 被告人の身体的魅力の増加は, 情状酌量の余地の認知を高め, 犯行の性格への帰属を低めることによって, 裁判員の量刑判断を甘くし, 殺人罪適用を減少させることが実証された。本研究の結果は, 身体的魅力のステレオタイプが裁判員の判断に影響することを証明した。