著者
猪又 孝元
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.846-853, 2011

  現在の心不全治療は,目に見えて悪い状態からの脱却を目指す「目に見える治療」と,長期予後改善というエビデンスに基づく「目に見えない治療」とに大別される.前者はその場を乗り切る治療であり,後者は固有の質を改善する治療である.心不全は進行性の病態が特徴的であり,先手先手の介入がより大きな利益を生む.最近では,慢性期予後を意識しての急性期介入,すなわち「目に見える治療」の際に「目に見えない治療」を含有できるかの試みがなされつつある.根底に流れるコンセプトは,治療アウトカムをいかに的確かつ具体的に意識できるかという点である.周術期という一種の急性病態に対し,麻酔科医が念頭に置くべき新たな潮流である.