- 著者
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猪狩 俊一郎
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雑誌
- 地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.10, pp.445-469, 2001-12-25 (Released:2015-03-21)
- 参考文献数
- 64
- 被引用文献数
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これまでにほとんど測定例の無いネオベンタンを含む日本の天然ガスの軽質炭化水素組成を測定した.エタン/プロパン比ネオベンタン/イソペンタン比ネオベンタン/イソブタン比の対数聞には直線関係が観察された.この関係は水素引き抜きによる炭化水素の分解によるものと説明された. 移動に伴う,軽質炭化水素の分別作用に対する岩石種の効果について研究を行った.種々の岩石や,鉱物を充填したカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより,それぞれの炭化水素の保持時間を測定した.メタン,エタン,プロパン,イソブタン,n-ブタン,イソペンタン,n-ペンタンについて測定を行った.層間水を持つ粘土鉱物,及びゼオライトを用いた場合に分別が観察された.それぞれの炭化水素の保持時間の順番は粘土鉱物やゼオライトの種類に依存した.また鉱物の空焼き時間の増加とともに分別は大きくなり,空焼きなしでは,非常に小さい分別が観察されるのみだった.これらのことは,分別には粘土鉱物やゼオライトの水が抜けた層間や細孔が重要であり鉱物が水和している通常の地下条件下では粘土鉱物やゼオライトによる,炭化水素の分別は重要でない事が明らかになった. 日本の水溶性ガス田の天然ガスのメタンの炭素同位体比を測定した.その結果,これまで一般に水溶性天然ガスは微生物起源と考えられてきたが熱分解起源のものも存在することが明らかになった. 秋田・新潟の油田ガスのメタン・エタン・プロパンの炭素同位体比を測定した.エタンの炭素同位体比とプロパンの炭素同位体比の聞には強い相関が観察された.この相関は速度論的に説明可能だった.一方メタンとエタンの炭素同位体比の聞には弱い相関が観察されるのみだ、った.これは微生物起源ガスの混入の影響と推定された.さらにこれらの同位体比を用いることにより,熱分解ガスと微生物起源ガスの混合率を計算することができ秋田・新潟の油田ガスはほとんどが両者の混合ガスであることが明らかになった.