著者
白井 俊明 浜田 修一 高橋 春男 猿山 一郎
出版者
新潮社
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.196-200, 1965

足尾鉱山で採取した黄銅鉱,黄鉄鉱および鉄閃亜鉛鉱中の微量セレンと銅,鉄,鉛,亜鉛およびカドミウムを分析し,セレン量と金属元素との関係を求めた。試料中のセレンは黄銅鉱で98.4~380.6ppm,黄鉄鉱で15.0および31.3ppm,また鉄閃亜鉛鉱では50.3および199.4ppmであった。鉄閃亜鉛鉱では黄銅鉱より早期晶出のより高温生成のものには黄銅鉱より後期晶出のより低温生成のものにくらべてセレン量が多いことがわかった。また足尾鉱山で採取した黄銅鉱には他の鉱山の黄銅鉱と比較してセレン量が多かった。分析値から計算された各試料中の純粋に近い黄銅鉱に含まれるセレンのモル百分率は2.98~13.46&times;10<sup>-2</sup>であって一定値を示さず,またセレンモル百分率と鉛,亜鉛およびカドミウム含有量との間にも相関関係は見いだされなかった。これは鉱液の不連続鉱化によるものと思われる。