著者
猿渡 博輝 首藤-中野 友香 中野 兼宏 比良松 道一 尾崎 行生 大久保 敬
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.312-317, 2008
被引用文献数
7

タカサゴユリ(<i>Lilium formosanum</i> Wallace)は,種子発芽後 1 年以内に開花する早期開花性および複数花茎抽苔の形質を持つ.これらの形質の育種的利用価値を検討するために,花柱切断授粉法により種子親としてタカサゴユリ,花粉親としてヤマユリ(<i>L. auratum</i>),カノコユリ(<i>L.</i> <i>speciosum</i>),リーガルユリ(<i>L. regale</i>),'ロリポップ','ピンクタイガー','ザザ','ル・レーヴ','マルコ・ポーロ'および'アフリカンクィーン'を用いた 9 組み合わせの種間交雑を行い,その後,子房切片培養を行った.すべての交雑組み合わせで発芽が観察され,雑種を 53 個体得ることができた.そのうち 30 個体(56.6%)および同様の手法を用いて作出したタカサゴユリ自家交配実生は発芽後 24 か月以内に開花した.開花雑種個体のうち 11 個体(36.7%)では 2~4 本の花茎が抽台した.早期開花性,複数花茎抽苔および有色花を同時に合わせ持つ雑種は,タカサゴユリと有色花アジアティックハイブリッドユリとの交配から 4 個体得られた.これらの結果は,タカサゴユリと有色花のアジアティックハイブリッドユリと交配すれば,3 つの有用形質,すなわち,早期開花性,複数花茎抽苔および有色花を同時に合わせ持つユリを育種できる可能性を示唆している.<br>