著者
船越 公威 玉利 高志 市耒原 優樹 北之口 卓志 田中 広音
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.117-128, 2016 (Released:2017-02-07)
参考文献数
41
被引用文献数
3

コテングコウモリMurina ussuriensisのねぐら利用を知るためアカメガシワトラップ法による7年間の継続調査と電波発信機による単年度の追跡調査を行った.幼獣で捕獲された個体の翌年の再捕獲率は雄13%,雌16%で,再捕獲場所は出生地点かその近くであった.成獣雄はすべて単独で捕獲された.成獣雌もコロニー形成期(6~8月)を除けば単独で捕獲された.成獣雄は森林の低層部(地上高2 m前後)および中層部(6~10 m)の両方のねぐらを利用し,場所を頻繁に変えていた.一方,成獣雌は,6~7月に中層部のねぐらで出産・哺育集団を形成した.哺育後は低層部のねぐらも利用し,頻繁にねぐらを変えていた.成獣の雌雄とも再捕獲の4割が捕獲地点のねぐらを利用し,他地点のねぐらを利用した場合は雄で平均116 m,雌で209 mの距離であった.雄のねぐら移動の経年変化では,特定の場所に留まるタイプと移動するタイプが見られた.秋の交尾期におけるハーレムの形成が示唆された.雌雄とも出生年の秋に繁殖に関与する個体が認められた.確認された最長生存期間は雄で4年,雌で4年半であった.