著者
玉利 麻紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

リビングライブラリーは、様々な社会的マイノリティが「生きている本」となり、「読者」である一般の人々と直接対話することを通して、誤解や偏見への気づく機会をつくり、多様性への理解を図る活動である。本研究では、リビングライブラリーを実施し、以下の二つのことを明らかにすることを目的とする。第一に、「生きている本」の語りを質的分析することで、より実感のある社会的マイノリティの自己概念モデルを構築することである(交付申請書における研究1)。第二に、「読者」として参加した一般の人々を対象に、障害等、社会的マイノリティの背景や特性への理解を促進する要因を明らかにすることである(交付申請書における研究3)。本研究では、平成23年度に、一年目の試みとして、リビングライブラリーを3回開催し、予備調査を行った。各回において、(1)開催日、(2)場所、(3)「生きている本」参加者数(延べ数)、(4)「読者」参加者数(延べ数)は下記の通りであった。第1回:(1)6月3-4日、(2)東京都、(3)29名、(4)234名。第2回:(1)7月12日、(2)東京都、(3)2名、(4)39名。第3回:(1)12月17-18日、(2)京都府、(3)27名、(4)240名。上記の内、研究1では全ての回を、研究3では規模の等しい第1回と第3回を予備調査の対象とした。研究1では、調査への協力に同意の得られた社会的マイノリティに対し、それぞれの背景に関する「受容」に焦点を当て、インタビューを行なった。研究3では、「読者」として参加した人々に対し、社会的マイノリティへの心理的距離感に焦点を当て、アンケート調査(無記名式)を行った。研究1、3の予備調査結果から、それぞれ、「他者」との対話のタイミングや状況、質がポジティブな態度変容へつながる可能性が見いだされた。本結果を精緻化するために、調査項目を修正し、疑似場面を用いての実験を追加することで、社会的マイノリティの社会的排除の解消策を提案できると考えられる。