著者
玉川 朝恵
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.57-65, 2016 (Released:2017-12-01)

ワークラインを規範とするスウェーデン社会において、移民が労働市場に参加していることは非常に重要な意味を持つ。それゆえ、移民・難民に対して寛容な政策がとられ、失業を防ぐため充実した労働プログラムが提供されている。しかし、充実した制度を提供している一方で、労働市場に参加できない人たちがいる。スウェーデンで生まれ育った移民第二世代の中でも、とりわけ非ヨーロッパ諸国出身の親を持つ移民第二世代の失業率が、他の地域出身の親を持つ第二世代およびスウェーデン人と比較して高いことが明らかとなっている。本稿では、第一にスウェーデンへの移民の変遷および政策を概観し、第二に先行研究の紹介および失業率の格差の要因について分類を行った。第三に先行研究を踏まえた上で、Portes&Rumbaut (2001=2014)の研究を参考に、非ヨーロッパ諸国出身の親を持つ移民第二世代の失業率が高い要因の考察を行った。その結果、移民第一世代の歴史と編入様式を考慮しなければならないということ、そして、人種に基づく差別が要因の一つであるとする研究がほとんどないため、その点を考慮した調査が求められるということが明らかになった。