著者
人見 英里 玉置 美子 友枝 幹夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.431-435, 1992 (Released:2008-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

ホウレンソウ中には通常水溶性の遊離のシュウ酸と不溶性のシュウ酸カルシウムが含まれている. 本研究では塩化カルシウムの濃度を変えた3種の標準培養液にホウレンソウを栽培し, その生育期間における重量と両タイプのシュウ酸含量を測定した. またこの期間中におけるシュウ酸生成および分解酵素活性を比較した.1.塩化カルシウムの濃度を0.67,25,50ppmの3種の栽培液でホウレンソウを栽培し, その生育度とシュウ酸含量を測定した. その結果, 塩化カルシウム濃度が低い液では, 生育は悪かった. また, シュウ酸はいずれの場合もほとんど不溶性のカルシウム塩になっており根からのシュウ酸の分泌は少量ではあるが認められた. このことから十分なカルシウムが供給されない場合, 水溶性シュウ酸がホウレンソウに蓄積されて, その発育に有害作用を及ぼすことが推察される.2.ホウレンソウの生育中には, シュウ酸の生成に関与する酵素であるグリオキシル酸酸化酵素とオキザロ酢酸加水分解酵素, シュウ酸分解にかかわる酵素であるシュウ酸脱炭酸酵素が存在していた. シュウ酸はこれらの酵素により生成あるいは分解されるが, 分解酵素活性の方が弱いために, ホウレンソウ中にシュウ酸が集積されるものと推定される.