著者
王 勝群
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1-14, 2014-11-25

本稿は,1944年に書かれた張愛玲の短編「赤薔薇・白薔薇」を空間の視点から論じる。先行研究は,赤/白という色彩のコードに象徴される二分化したジェンダー構造を問題視するものが多い。それ対して,本稿は男主人公・振保に焦点を当て,まずテクストにおける公寓(アパート)や一戸建てという主要な空間を詳細に考察し,それぞれ赤薔薇・嬌蕊,白薔薇・煙〓などの女性登場人物との関係を検討する。さらに,作中のもう一つの重要な空間-鏡の空間を考察することで,振保の自己分裂の問題を提示したい。