著者
大地 信彰 稲永 隆 平方 秀樹 名西 史夫 小野山 薫 藤島 正敏 王 幸則 三井島 千秋 藤見 惺
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1069-1074, 1986-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
26

蛋白同化ステロイド剤の1つであるmepitiostaneを貧血治療薬として, 33例の安定透析例を対象に使用した. 本剤投与前6ヵ月間におけるHt値の自然変動を各症例毎に調べ, その平均値および標準偏差値SDを求めた. 本剤投与前のHt値より, 投与後4 S D以上Htの上昇を認めた症例を有効群, それ以外を無効群とし, 各群間におけるBUN, 血清鉄等各パラメーターの経時的推移を比較検討した. さらに, 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, その造血効果に及ぼす影響について検討を加えた. mepitiostaneは10mgないし20mgを朝, 夕の分服とし, 4ヵ月間連日経口投与した.結果: 1. 有効群ではHt値は投与1ヵ月後より有意に上昇し, 平均で4.6%増加した. 同時に血清Creat値の上昇, BUN値の低下等蛋白同化作用に基づくと考えられる変化がより強くみられた. 2. 有効群では貧血改善に伴い血清鉄が有意に低下した. これは鉄利用亢進に基づく変化と考えられ, 鉄剤の併用で本剤の貧血改善効果がより増大する可能性が示唆された. 3. 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, 本剤の造血効果を抑制している可能性が示唆された.