著者
中村 敏子 木村 玄次郎 富田 純 井上 琢也 稲永 隆
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.1407-1413, 1995-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
16

血液透析の導入が必要である患者では, 高血圧や肺水腫等のため, 適正な体液量レベルの体重 (DW) をあらかじめ推測することが重要である. しかし, これまでは, DWを決定する絶対的な基準がないため, 実際にどの体重レベルまで除水すればよいのかを推定することは困難であった. そこで, 1977年から1987年の間に当施設で血液透析に導入し転院し得た慢性腎不全患者190例を対象として, 導入時の体重変化の程度と性別, 年齢, 原疾患, 血圧, 胸部X線 (CTR), 心電図などを調べ, DWまでの除水量や体液量是正後の血圧の推定が可能かどうか検討した. 導入期の体重 (iBW) と転院時の体重 (mBW) の差をとり, それを後者で除したものを体重変化率 (%ΔBW) とした. 導入期の収縮期血圧 (iSBP) と維持期の収縮期血圧 (mSBP) の差をとり, それを前者で除したものを収縮期血圧変化率 (%ΔSBP) とした. 性別や年齢は%ΔBWや%ΔSBPに影響を与えなかった. 導入時心電図所見を左室肥大とST変化により4段階に分けスコア化した (ECGスコア). %ΔBwはiSBP, CTR, ECGスコアと相関し, 慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症に比し低値を示した. iSBPは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比し低値であった. %ΔSBPは, iSBPやECGスコアと有意な相関を示し, 慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症では腎硬化症に比し高値であった. ECGスコアは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比して軽度であった. このように, 透析導入時に必ず施行される諸検査 (血圧, 心電図, 胸部X線) を利用して, 導入時の体重増加がDWの何パーセントであり, DWまでどの程度除水すべきなのか, 維持期には血圧がどのレベルまで低下するのかをも, 推定することが可能であることが示唆された.
著者
大地 信彰 稲永 隆 平方 秀樹 名西 史夫 小野山 薫 藤島 正敏 王 幸則 三井島 千秋 藤見 惺
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1069-1074, 1986-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
26

蛋白同化ステロイド剤の1つであるmepitiostaneを貧血治療薬として, 33例の安定透析例を対象に使用した. 本剤投与前6ヵ月間におけるHt値の自然変動を各症例毎に調べ, その平均値および標準偏差値SDを求めた. 本剤投与前のHt値より, 投与後4 S D以上Htの上昇を認めた症例を有効群, それ以外を無効群とし, 各群間におけるBUN, 血清鉄等各パラメーターの経時的推移を比較検討した. さらに, 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, その造血効果に及ぼす影響について検討を加えた. mepitiostaneは10mgないし20mgを朝, 夕の分服とし, 4ヵ月間連日経口投与した.結果: 1. 有効群ではHt値は投与1ヵ月後より有意に上昇し, 平均で4.6%増加した. 同時に血清Creat値の上昇, BUN値の低下等蛋白同化作用に基づくと考えられる変化がより強くみられた. 2. 有効群では貧血改善に伴い血清鉄が有意に低下した. これは鉄利用亢進に基づく変化と考えられ, 鉄剤の併用で本剤の貧血改善効果がより増大する可能性が示唆された. 3. 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, 本剤の造血効果を抑制している可能性が示唆された.