著者
王 書[イ]
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-14, 2011-03

大正作家と中国との関連を言うとき、すぐ思い浮かぶのは谷崎潤一郎、佐藤春夫、芥川龍之介、木下杢太郎などといった作家ぐらいで、その数が明治時代と比べるとずいぶん少ないが、しかし、右の作家たちはいずれも大正時代においての大家であることは事実である。これらの作家たちは大正時代において、いわゆる「支那趣味」を持つ作家たちである。「支那趣味」という言葉が生活の西洋化が進んだ大正時代に生まれたのは興味深いことである。明治維新以来、文学者を含む日本人が、社会における各分野で欧米を追う中で、これらの文学者たちは、どうして中国に関心を寄せたのだろうか。また、当時の中国はどのように彼らの眼に映ったのであろうか。そして、彼らの「支那趣味」の内実はどのようなものであろうか。本論文では、谷崎潤一郎と芥川を例にあげ、大正作家の「支那趣味」を見ていきたい。