著者
瓜生 朋恵 西本 由紀子 梶木 典子 上野 勝代
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

目的 少子高齢化社会の現代では、より幅広い分野での子育て支援や子育てしやすいまちづくりの実現が課題となっている。中でも、子育て中の親が社会から孤立しないためにも、社会参加を支援することは重要であり、そのために子連れ外出者が安全・安心・快適に外出できる環境を整備する必要がある。本研究では、鉄道利用者を対象にベビーカー利用者と非利用者間に生じている心理的バリアを明らかにし、鉄道における子連れ外出活動を支援する方策について検討することを目的とする。<br>方法 関西在住の鉄道利用者を対象に、鉄道におけるベビーカーを利用しての子連れ外出について、タブレット端末のアンケートアプリを使用してイベントや団体への街頭調査を実施した(一部質問用紙調査を併用)。調査は2011年10月~12月にかけて行い、配布数372票、回収数322票、回収率87%であった。<br>結果 意識調査の結果、ベビーカー利用者が鉄道を利用することに対しては、全体的に肯定的な意見が多く、車両内でのベビーカー利用者に対する優先者対応についても肯定的な意見が多かった。これらの意識に対し、子育て経験の有無による有意な差はみられなかった。しかし、回答者の年齢による意識の違いがみられ、特に20年以上前の子育て経験者はベビーカー利用者の外出行為に理解を示しつつも、「ベビーカー利用者は周囲への配慮に欠ける」等の厳しい意見を持っており、世代間ギャップの存在が明らかとなった。また、回答者の年代に関わらずベビーカー利用者の鉄道の利用円滑化のために、車両と旅客施設の整備を望む声があった。以上の結果より、心理的バリアを改善するためにはベビーカー優先スペースの設置やマナー講習などのハード・ソフト両面の整備を検討していく必要がある。