- 著者
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新谷 和文
古川 裕子
大川 久美子
宮下 亜衣
本郷 富
瓦林 啓介
古島 悦子
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.G0954, 2006
【はじめに】病院等の施設におけるインシデント・アクシデントレポートは、転倒・転落事故が最も多いことが報告されている。<BR>転倒・転落には身体機能・薬物・認知・環境など多様な要因があるといわれている。また、抑制廃止や活動向上などの対策は、リハビリテーションの効果を上げる要因ではあるが、転倒のリスクは向上するといえる。そこで転倒・転落事故減少を目的とした多職種によるチームを作り、会議とカンファレンスを開催したのでその内容を紹介する。<BR>【転倒・転落事故の実態】当院での平成15年10月から平成16年9月の1年間のインシデント・アクシデントレポートは385件で、うち転倒・転落に関するものは134件(34.8%)と最も多く、月別の発生件数件数では新入職員や部署異動の4月が21件と最も多かった。また、リハビリテーション科の転倒・転落事故は55件で、うち担当以外の患者様を受け持った時の事故は12件(21.8%)であった。当院のセラピストが担当以外の患者様を受け持つのは1~2週間に1度でありこの発生率は高率といえる。これらは転倒・転落事故は患者様を正確に把握していないことが大きな原因と考えられた。<BR>【会議・カンファレンスの開催】転倒・転落事故防止を目的とした会議、カンファレンスを平成17年6月より開始した。<BR>会議・カンファレンスとも月に一度行っている。転倒・転落防止会議は看護師およびリハスタッフで行っている。主な議題は、転倒・転落に関する事故報告・環境面の改善策・危険者のスタッフへの周知・予防のための知識についての教育などである。<BR>また、転倒防止カンファレンスは会議のスタッフに薬剤師・管理栄養士を追加した多職種で開催している。主な内容は転倒危険者の正確な把握とその対策である。まず、病棟看護師から転倒危険者をリストアップしてもらい、各部署が評価を行っている。具体的には看護師が転倒スコアのチェックおよび病棟での危険行為状況、理学療法で身体機能(ファンクショナルリーチテスト)および自己管理能力、作業療法・言語聴覚士による認知機能(HDS-R)、薬剤師による転倒関連の薬剤チェック、管理栄養士による栄養面のチェックなどを行い、カンファレンスを開催している。これにより多方面での転倒リスク把握に努めている。また、これらの評価をもとに対策を立てスタッフに周知している。<BR>【考察】転倒防止のための会議・カンファレンスを開催し、センサーマット購入、ベッドのキャスターの固定性向上、ポータブルトイレの正しい使い方の徹底など転倒防止のための成果が徐々に見られてきている。また、各部署による転倒の評価を行うことにより、転倒危険者の正確な把握が向上してきており、転倒発生状況は減少傾向のように思える。今後は、この会議・カンファレンスが転倒・転落事故防止に成果をあげているかどうかを検討する予定である。<BR><BR>