著者
安成 哲三 田 少奮
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.161-169, 1989-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

中華人民共和国の雲南省全域における寒波の時空間構造を,28年間 (1958~1987) の冬 (12, 1, 2月)の月平均気温偏差に主成分分析の手法を適用することにより調べた。また,卓越する寒波のモードが,中国全域に影響を及ぼす寒波の卓越モードと,どのような関係にあるかを,中国全土160地点の同じデータの主成分分析の結果と比較することにより,考察した。その結果,雲南省全域で最も卓越する寒波の型は,より巨視的にみると,チベット高原から雲貴高原,さらに華南南部にかけての山岳・丘陵地にのみ集中して襲来する寒波(雲南モード)に対応していること,これに対し,長江の中・下流を中心として中国平原部全域に最も卓越する寒波(平原モード)の影響は,雲南省では比較的小さく,よりローカルであることがわかった。雲南モードの寒波は,チベット高原から吹き降りて来る寒気団と,高原北(東)縁を地形に沿って流れ降りて来る沿岸ケルヴィン波的な寒気団の振舞いが重要であることも示唆された。 これら二つの寒波のモードに対応する大規模循環場を,北半球全域の500mb高度偏差と,地上気圧偏差の合成図手法により,調べた。その結果,雲南モードは,偏西風の遙か風上側である,ユーラシア大陸西部と北大西洋からグリーンランド付近での循環場の偏差と密接に関連していること,これに対し,平原モードは,中国北東方のシベリア中・東部での低指数型循環と寒気団の南下に,より直接的に対応していることが明かとなった。