- 著者
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横山 達朗
藤倉 直樹
増田 幸則
鹿田 謙一
田中 作彌
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.6, pp.307-321, 1996-12-01 (Released:2011-09-07)
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
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左冠動脈前下行枝結紮により急性心筋虚血を惹起した麻酔開胸イヌの心血行動態および心機能におよぼすジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬, 塩酸エホニジピンの効果をニフェジピンおよびニソルジピンと比較検討した.塩酸エホニジピン (10または30μg/kg) またはニソルジピン (1または3μg/kg) は冠動脈結紮10分前に, ニフェジピン (1または3μg/kg) は冠動脈結紮3分前にそれぞれ静脈内投与し, 冠動脈結紮50分後まで観察した.塩酸エホニジピン, ニフェジピンまたはニソルジピンは用量依存的に, 総末梢血管抵抗および血圧を減少させ, 心拍出量および心筋局所血流量を増加させた.冠動脈結紮により虚血領域における局所血流量減少および心筋壁運動異常が認められ, さらに末梢血管抵抗がほとんど変化しないにも拘わらず血圧および心拍出量の減少が認められた.塩酸エホニジピン, ニフェジピンまたはニソルジピンは, 虚血領域における局所血流量減少および心筋壁運動異常を抑制する傾向が認められた.冠動脈結紮による全身循環動態の変化に対して, 塩酸エホニジピン, ニフェジピンまたはニソルジピンは異なる影響をおよぼした.溶媒投与群との比較において塩酸エホニジピン (30μg/kg) は, 心筋虚血中, 心拍数, 血圧および末梢血管抵抗を低値に, 心拍出量を高値にそれぞれ維持した.ニソルジピン (3μg/kg) によっても同様な作用が認められたが心拍数の減少は認められなかった.ニフェジピン (3μg/kg) は冠動脈結紮による全身循環動態の変化に対してほとんど影響をおよぼさなかった.以上の結果より, 塩酸エホニジピンは心筋酸素需要を減少させることにより虚血による心機能障害を抑制する効果を有することが示唆された.