著者
田中 凌
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

本研究は、「言葉の使用には責任を取らなければならない」という規範の内実とその実装を明らかにすることを目指す。着目するのは、言葉の使用には「この使用の仕方が正しいものである」という暗黙裡の判断が常に伴い、話者はその判断に責任を負うという考えである。後期ウィトゲンシュタイン、また一部の解釈によればカントにもこうした考えが見出されるとされるが、本研究は現代の言語哲学・認識論・倫理学の枠組みを用いてそれを明晰化する。その上で、この種の責任の存在は「自分の言葉の意味を明示化する」能力を個々の話者に要請することを示し、当該の要請が経験的言語科学の視点から見てどの程度現実的なものであるかを明らかにする。