著者
田中 孝宜
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.28-37, 2018 (Released:2018-03-21)

イギリスの公共放送BBC存続の基本法規に当たる特許状が2017年1月更新された。特許状の更新に当たってBBCのあり方が議論される。議論のたたき台として政府が2015年7月に公表した「グリーンペーパー」では、「BBCの使命、目的、価値」、「BBCの事業範囲およびその対象」、BBCの財源」、「BBCの管理体制」の4つの主題を軸に一般から意見募集が行われた。意見公募では、デジタル時代に合わせてBBCが事業や予算規模を拡大することについて69%が賛成し、60%の人が受信許可料制度の変更は必要ないとした。こうした中で、今回の特許状更新での最大の変更はBBCのガバナンス、統治システムであった。前回の特許状ではBBCの内部に監督機関のBBCトラストを設置したが、今回はBBCトラストを廃止し、初めて外部の独立規制機関Ofcom(Office of Communications)がBBCの規制・監督を担うことになった。Ofcomではまず、BBCを規制する『運営枠組み』を示し、その後、具体的な量的基準を示した『運営免許』を10月に公表した。OfcomはBBCの業績評価を行い、BBCが新たなサービスを計画する場合Ofcomが決定権を持つなど、制度上は強い権限を持つことになった。本稿は、特許状更新議論の過程を振り返るとともに新ガバナンス体制のあり方を整理するものである。
著者
田中 孝宜
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.74-81, 2018 (Released:2018-09-20)

イギリスの公共放送BBC存続の基本法規に当たる特許状が2017年更新され、BBCの統治システムが大きく変更された。BBC内部のBBCトラストが廃止され、BBCの監督機能が初めて外部の独立規制機関Ofcom(Office of Communications:放送通信庁)に移された。従来の商業放送に加えて、新たに公共放送BBCも監督することになったOfcomでは、放送制度・コンテンツを監督する責任者として、元BBC Newsチャンネルの責任者でアイルランドの公共放送RTEの副会長ケビン・バッカ―スト氏をヘッドハントした。バッカ―スト氏は、BBCの夜のメインニュース“News at 10”の編集長や、BBC Newsチャンネルのコントローラー(総責任者)を歴任するなど、BBC職員として長いキャリアを持つ。バッカ―スト氏のもとで、Ofcomは、BBCをどう規制・監督しようとしているのか。BBCトラスト時代と何を変えようとしているのか。2018年2月、ロンドンでバッカースト氏に話しを聞いた。
著者
大墻 敦 田中 孝宜
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.2-23, 2018

放送と通信がすでに融合した欧米では、放送局が主体的にインターネット上の様々なプラットフォームを用いてニュースや映像コンテンツ配信に取組んでいる。CNNデジタルワールドワイド上席副社長兼編集長メレディス・アートリー氏とアメリカ公共放送(PBS)テクノロジー戦略担当副社長エリック・ウォルフ氏を招きシンポジウムを開催した。アートリー氏は「あらゆるデジタルサービスに対応できるモダン・ジャーナリストが必要。」と述べ、さらに「コントロール出来ることと出来ないことを意識すること」などの5つの教訓などについて報告があった。ウォルフ氏からは、公共メディアへの進化を目指すPBSがデジタルサービスだけでなく、全米放送サービスの充実も改めて目指していることについて、子ども向けサービスPBSKIDSを例に報告があった。また、BBCの戦略と2016年に放送サービスを停止しインターネットのみで配信を始めた若者向けチャンネルBBCThreeの成果と課題について、筆者(田中)から、報告を行った。
著者
田中 孝宜 TANAKA Takanobu
出版者
名古屋大学大学院国際開発研究科
雑誌
国際開発研究フォーラム (ISSN:13413732)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.137-156, 2009-03-24

This paper examines the issue of international cooperation in the field of disaster preparedness/reduction by looking into Japan’s assistance to the disaster struck countries after the Indian Ocean earthquake and tsunami in 2004. The objectives of this research are to put in order the theoretical frameworks of international assistance in disaster risk management and by applying the framework to evaluate the effectiveness of Japan’s assistance. Disaster risk management is a continuous process of relief, rehabilitation, reconstruction, disaster reduction and preparedness. However it is usually the relief efforts that catch people’s attention with global media coverage and it is emergency response that international assistance mainly focuses on. As time passes and memories of disaster fade away, international assistance also fades away. Japan with its knowledge and experience of disaster risk management started its term assistance to countries around the Indian Ocean with the overall goal on building better prepared societies to reduce damage and the number of victims in case of future disasters. By examining the activities of JICA, Japan International Cooperation Agency, this paper argues the importance of such cooperation. International cooperation for disaster preparedness/reduction has only a short history with little past academic investigation. Therefore this paper also seeks to clarify the issues and challenges of such assistance.