著者
田中 徳定
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.1-11, 2003-07-10

「家」の永続性は祖先崇拝と表裏一体となっている。それゆえ、歴史学における「家」成立の研究では、祖先祭祀の観点から多くの成果が積み重ねられてきた。本稿では、「木幡寺呪願文」の分析から、藤原氏の木幡墓所が、子孫繁栄を願って四神相応の地に点定され、さらに仏教による祖先祭祀が行われていたこと、その後も藤原「氏」繁栄の基盤として認識されていたことを明らかにした。また、中世に氏から家が分立していく藤原氏の祖先祭祀では、各家の始祖が建立した寺院が「家」の精神的紐帯となっていくことを考察した。