著者
田中 敏文 伊藤 克亘
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.315-316, 2020-02-20

日本の伝統音楽の音階は、西洋音楽のオクターブ音階とは異なる。小泉文夫は20世紀半ばに世界各地の民族音楽を採集し、完全4度を枠組みとするテトラコルド音階が東アジア中心に広く分布することを発見した。さらにテトラコルドが積み重なるとオクターブ音階に変遷する傾向を確認した。能の謡の代表的な音階の一つであるヨワ吟は、上、中、下という完全4度間隔の核音とその中間音で構成され、典型的なテトラコルド音階である。著者は長年の能楽師としての経験から、ヨワ吟の音階にオクターブ音階に変遷する兆候を感知し、その一例として上で終止する時の実際の音高が流儀によって異なることをピッチ解析により検証した。
著者
田中 敏文 於久 光輔 永原 正章 山本 裕
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2017-MUS-114, no.5, pp.1-5, 2017-02-20

日本音楽 (伝統音楽) では,西洋音楽に比べ,和音の意識が希薄でその代わりに音色を重視する.西洋音楽が “クリスタルボイス” として透明感のある声を好むのみ対して,日本音楽は “渋い声” として太い声,かすれた声,こもった声を好む.このことに注目して謡 (うたい) の声のスペクトルを解析した結果,西洋音楽の声に比べて,非整数倍音が多いことを確認し,さらに非整数倍音の発生要因を考察した.