- 著者
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田中 礼二
SEHGAL Pankaj
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2006
タンパク質はいくつかの中間状態、Molten Globule(MG)を経て変性し、MG状態がタンパク質の機能に深く関わっていることが明らかになるにつれ、盛んに研究されるようになった。本研究では、代表的な球状タンパク質BovineSerum Albumin(BSA)と・-Lactalbumin(α-LA)の、界面活性剤による変性過程を詳細に調べた。近紫外、遠紫外領域の円偏光2色性(CD)スペクトル、トリプトファン蛍光光度測定や8-anilino-1-naphtahlene sulfonic acid(ANS)蛍光光度測定などを行った結果、界面活性剤濃度が小さい領域でいくつかのMG状態の存在を確認した。また、多くの界面活性剤が、それらの臨界ミセル濃度(CMC)付近で、タンパク質の変性を完了することが解った。イオン性界面活性剤を用いた系では、それぞれの界面活性剤イオンに応答するイオン選択性電極を作成し、電位差滴定法によりタンパク質に結合した界面活性剤分子の数を決定した。それによると、MG状態では、タンパク質に界面活性剤が数個結合していることが分かった。また、いくつかの試行の結果、複数の界面活性剤混合系におけるタンパク質の挙動が非常に興味深いことが分かった。界面活性剤の混合は混合ミセルを形成し、興味深い挙動をとる。タンパク質を加える前に、いくつかの混合ミセルの性質について研究した。混合ミセル系はそれぞれ特徴的な性質を持っているが、なかでも陰イオン性のsodium dodecylsulfate(SDS)とsodium N-dodecanolysarcosinate(SLAS)の混合系は興味深い結果を示した。この系の性質は、SLASの性質が支配的で、SLASを僅かに加えるだけで、特に水溶液表面の性質が大きく変化した。CMC付近で表面張力の値が大きく低下し、ある濃度を超えて界面活性剤濃度が増えると表面張力は増加に転じ、CMCに達した。現在、この現象は、表面でヘミミセルが生成することによって現れると考え、表面張力が増加に転じる濃度を臨界ヘミミセル濃度(CHC)と名付けたが、更なる研究が必要である。