著者
田中 義郎
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

K_12の教育改革はアメリカが如何に子どもを教育するのかを反映している。しかし、こうした改革の努力が、既存の大学入試や入試政策とのギャップをむしろ広げ、高校での大学進学準備を不適切なものにしていると指摘され、問題点が三つ挙げられている。(1)高校での大学進学準備に関して、生徒のアセスメントのための客観的な評価尺度が欠けている、(2)高校生が行う大学教育の準備と大学入試や入試政策の基準に不整合がある。(3)高校教育改革の中で、大学教育への準備は重用視されていない。こうした状況が、大学への進学を希望する高校生や高校に、混交した情報と方向づけを与え、K_12における数多くの教育改革の努力の最終的な効果を疑問視させるに至ったとされる。整合性に加えて、大学教育は大学卒業率の低下とフレッシュマン(大学1年生)のリメディアル率の上昇を憂慮している。高校で良く準備されて大学に入学してくる学生たちは、こうした問題を抱えずにすんでおり、良好な大学生活を送っている。我が国の場合、高校教育の再検討というよりも、高校での十分な学習ができていないままに大学に入学してくる学生のリメディアル教育の仕組みをどう作るかといった議論が中心であり、大学教育と高校教育との接続において、大学進学を準備するために高校教育を如何に見直すかといった議論が不足していることが再確認された。ユニバーサル時代とは、誰もが大学教育にアクセスできる時代であり、大学はそうした時代に対応すると同時に、その時代を担うという大学の使命を全うするために、内容そのもののユニバーサル化ではなく、そこへのアクセスのユニバーサル化を可能にする努力が大学と高校の間に作られてきていることが確認された。本研究を通じて、社会に出る準備をする期間が大学にまで延長されたという現実とそれを支えるシステムの構築(入学試験と前後の教育の有り様)を如何に準備するかがより鮮明となった。