著者
中田 幸司
出版者
玉川大学
雑誌
玉川大学文学部紀要 (ISSN:02868903)
巻号頁・発行日
no.63, pp.95-108, 2023-03-30

古典教育における「更衣」(こうい)は天皇の夫人として理解される傾向がある。一方、衣を替える意義をもつ「更衣」が平安朝に隆盛した『催馬楽』にはある。この詞章には愛しい相手に思いを伝える世界観がある。身分制度や年中行事から距離をおき、自/他の情を交えようとする往時の人はいかに表明したのか。そこには宮廷人による知識と脚色した詞章があると考えられる。
著者
松元 まどか
出版者
玉川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

多面的な動機づけの神経機構を明らかにするため、1.達成動機、2.自己効力感、3.自己決定感による内発的動機づけの促進の神経基盤について、機能的磁気共鳴イメージング法(fMRI)で検討してきた。1.行動を動機づける重要な要因の一つに達成目標があるが、ヒトの達成目標は質的に異なる2種類(自分の成績を超える「習得目標」と他者の成績を超える「遂行目標」)に大別される。それぞれの目標を設定して課題を行っている際の脳活動をfMRIで調べた。習得目標で課題を行っている際には動機付けが高く、遂行目標で課題を行っている際には、動機付けは成績と正の相関を示した。さらに、前頭前野外側部、腹側線条体が動機づけの大きさに応じて活動すること、また、側頭頭頂接合部が遂行目標のときよりも習得目標のときに強く活動することが明らかになった(2011年の北米神経科学大会、神経経済学学会において発表)。2.自分の行動によって特定の結果をうまく導くことができるという期待感は自己効力感と呼ばれており、その高低が動機づけに影響することが分かっているが、その神経基盤は不明である。前頭葉内側部-線条体-視床-前頭葉内側部という神経ループに着目し、自己効力感およびその動機づけへの影響の神経基盤を明らかにするため、自己効力感を調べるのに適した課題の検討を行った。3.外的報酬による内発的動機づけの低減効果(アンダーマイニング効果)において、前頭前野と線条体との相互作用が重要であることを2010年に報告したが、逆に内発的動機づけを促進する神経機構については、よく分かっていない。心理学的な先行研究から、この促進には自己決定感の有無が重要な役割を果たすことが示唆されているので、自己決定感の有無を制御した動機づけ課題を考案、課題プログラムの検討を行った。
著者
小野 正人
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

真社会性昆虫を代表するグループであるマルハナバチ類、スズメバチ類、ミツバチ類が、個体間のコミュニケーション手段として利用している情報機能をもつ物質群にフォーカスを合わせ、その実態の解明を行った。各々のハチ類が、さまざまな揮発性の化学物質を防衛行動、配偶行動、採餌行動に利用していることが明らかとなり、物質の特定もなされた。さらに、それらの情報機能をもつ物質を応用面で活用する試みがなされた。
著者
冨士池 優美
出版者
玉川大学
雑誌
玉川大学文学部紀要 (ISSN:02868903)
巻号頁・発行日
no.63, pp.81-93, 2023-03-30

「西行物語」5 系統8 種類の諸本を対象とした『西行物語コーパス』に基づき,語彙量とTTR,語種比率,品詞比率(名詞率とMVR),高頻度語,共通度の5 観点から,「西行物語」諸本の比較,『日本語歴史コーパス 鎌倉時代編』所収の同時代資料との比較を行った。その結果,采女本系3 本の類似が数値として明らかになった。また,同時代資料を比較すると,「西行物語」諸本は類似したテキスト群であることが明らかになった。
著者
荒金 眞佐子
出版者
玉川大学
巻号頁・発行日
2015-03-15

農学研究科
著者
鮫島 和行 瀧本 彩加 澤 幸祐 永澤 美保 村井 千寿子
出版者
玉川大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

人と動物間の社会的シグナルの動態を、自然な状況で計測する技術を確立し、人と動物との相互行為とその学習を、心理実験やモデル化を通じてあきらかにする事を目的とする。これまでの研究実績をうけて、本年度の実績は具体的には、1)人=馬インタラクション研究において、調馬策実験課題おける音声指示と動作との間の関係を記述し、人の音声に応じて馬の行動変化までの時間の変化が、馬をどれだけ指示通り動かすことができたか、という「人馬一体間」の主観評定と比較し、人馬一体感に2つの種類が存在することを明らかにした。人=馬インタラクションの実験結果からの知見を応用した車両制御に関するアイデアを特許として共同で出願した。2)人どうしのコミュニケーションにおいて、自然な他者認知の指標としてもちいられている「あくびの伝染」が人=馬間で存在するかどうかの実験を行い、あくびの伝染が人=馬間でも存在する事を示した。3)人=サルインタラクション研究において、人がサルの行動を学習させる訓練において、訓練されるサルの行動だけでなく、人の行動も変化している事を示し、相互学習が人=サル間で起きていることを示唆した。4)人=サルインタラクション研究において、social reward としてのsocial-touchが指刺しかだいにおいての問題行動を減らすことを示した。5)人=イヌインターラクション研究において、保護犬と人との同期動作や視線、および人の指刺し行動の情報が、馴化前後で異なることをプレリミナリーな結果として示すことに成功した。
著者
小島 佐恵子
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は現状のまとめとして、第29回アメリカ教育学会で発表を行った。発表は、米国の大学における州財政困難が州立大学にどのような影響を及ぼしているのか、なかでも学生支援部門への影響はどのようになっているか、The Chronicle of Higher EducationやInside Higher Edなどの各種高等教育関連のウェブサイト他、日本学術振興会の海外学術動向ポータルサイトに掲載された内容、また個別大学が公表している情報を収拾し、まとめることで、事例調査選定に役立てることを目的とした。結論としては、州財政の高等教育への支出は回復傾向を見せているが、リーマン・ショック以前のレベルには戻っていないこと、州財政が逼迫しているところではもちろん、そのレベルに限らず、複数の大学で学生支援のポストが削減・統合されていることが明らかとなった。州立大学に留まらず、連邦政府や州からの経常補助がないとされる私立大学においても、同様の傾向が見られた。一方で、アカデミック・アドバイジングが維持されている傾向や、学生支援への支出を増加することで学生の卒業率を上げることができているという傾向も見られた。また、とくにコミュニティ・カレッジにおいては連邦政府も学生支援に資金を拠出している例も見られた。そのため、全体的に削減傾向にはあるものの、部分的には維持・補填されているところもあり、とくに教学に近い部分では維持・補填されている傾向があるのではないかということが推察された。
著者
高橋 襄
出版者
玉川大学
雑誌
ミツバチ科学 (ISSN:03882217)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.7-14, 2003-02-25
著者
原 百合恵
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

2型糖尿病治療薬のメトホルミンは、AMPK(AMP-activated protein kinase)の活性化により肝臓での糖新生を抑制し血糖値を低下させるが、効果が十分に得られない場合も多い。申請者は、クエン酸摂取はメトホルミンの効果とは逆に肝臓での糖新生を亢進させ血糖値を上昇させることを明らかにしてきた。クエン酸とメトホルミンは拮抗的な作用を持つことから、クエン酸摂取がメトホルミンの効果を減弱させる可能性がある。本研究では、糖尿病モデルマウスを用いて、クエン酸摂取がAMPK活性化を抑制しメトホルミンの作用を減弱させるか検証し、メトホルミンと相互作用する食品成分を提示することを目的とする。
著者
二見 史生 相馬 正宜
出版者
玉川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

暗号学の基本的な限界であるシャノン限界を超越可能な物理暗号は,暗号鍵の利用効率を高められるので,情報通信量が飛躍的に増大している今日,その実現が期待されている。本研究では,その実現を目指し周波数分解して位相変調する方式の物理暗号の原理検証実験を実施した。波長1.5μm帯,データ10Gb/sの信号光の暗号・復号実験に成功し,更に,暗号信号光の光ファイバ120km伝送にも成功した。本成果により,暗号学のシャノン限界を超越する物理暗号の実現に向け大きく前進した。
著者
柳原 直人 鈴木 夏夫 菅沢 深
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この車椅子は先端に4個の車輪が付いた十字アームを用いる。この4個の車輪はスプロケットが取り付いており、これらはループ状のチェーンとスプロケットを取り付けたモータによって同時に駆動される。この車輪付き十字アーム機構は平地では車輪の回転によって走行し、車輪が前方には小型の車輪付き十字アームを先端に持った姿勢保持アームを取り付け、これにはキャスターが取り付けられている。この車椅子は車輪付き十字アーム機構の4個の車輪のうち接地している車輪が駆動輪となる。平地走行では駆動輪が取り付けられている十字アームを回転させ、左右各一輪を駆動輪として走行する。階段昇降時には姿勢保持アームに加わる荷重を減少させるために座席を駆動モータによって移動させ、車体の重心の位置を駆動輪に近づける。また、階段昇降では段差による高さの変動よって座席の角度が変化しないようにするため、姿勢保持アームの高さを調整する。車椅子の操作用のジョイスティックは、どのような利用者でも容易に操作できることを目標とし、複雑な操作を必要とせずに、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えのみで運転できるシステムとした。この車椅子の走行実験の結果、けあげ高さ165mm、踏み面高さ320mmの階段を体重70kgの人が昇降した実験においては、一段あたりの上昇時間約3秒、降下時間約6秒で安定した昇降が可能であることが確かめられた。また、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えが数秒で可能となり、この車椅子の技術は実用レベルまで到達したと判断している。
著者
高橋 英之
出版者
玉川大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

コミュニケーションは人間の社会性の基盤となるものである.コミュニケーションは情報交換であり,一般的にはそこに曖昧さは必要が無いと考えられる.本研究では,人間のコミュニケーションに含まれる曖昧さが,特に大きな規模の社会集団では非常に重要な機能を持つという仮説を提起し,それを検討するためのシミュレーションと心理実験を行った.その結果,曖昧な顔表情を用いることで他者とのコミュニケーションが円滑になることを示すデータを得た.
著者
白柳 弘幸 岡部 芳広 佐藤 由美 藤森 智子 林 初梅 槻木 瑞生
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

戦前の日本国は、台湾・朝鮮・樺太・関東州・満洲国・南洋群島・南方占領地に、地域によって初等教育機関のみの所もあるが、台湾と朝鮮には帝国大学も設置した。今回、それらの学校所在を明らかにした。また、校舎施設や一部教科の指導内容が戦後に引き継がれたことを台湾に於いて確認した。当地からの日本人引き揚げ後も、戦後復興のために残った日本人の大学教員や技術者がいた。その子弟たちが通った日僑学校や日籍学校と呼ばれた日本人学校が台湾・北朝鮮・満洲の主要都市にあり、教育内容等について明らかにした。
著者
江澤 真 猪狩 敦史 田畑 幸子
出版者
玉川大学
雑誌
玉川大学農学部研究報告 (ISSN:0082156X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.61-68, 2000

市販ナチュラルチーズのモザレラ(MC),チェダー(CC),エメンタール(EC)およびグリエール(GE),ならびにプロセスチーズ(PC)の化学組成および窒素分布について観察した.MCの12%TCA可溶性窒素含量は最も低く,ついでPC,CC,EC,GC順に高かった.パラカゼインのカルシウム/無機リンモル比は,ナチュラルチーズの中でMCが最も低かった.尿素-アクリルアミドゲル電気泳動図におけるCC,ECおよびGCのαS1-バンド強度は,αS1-Iバンドの出現とともに著しく低下した.各チーズの加熱時の糸引き性は,MC>GC>EC>CCの順に高かったが,PCは糸引きを示さなかった.