著者
田中 薫里 上田 エジウソン 寺内 文雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.284, 2014 (Released:2014-07-04)

本研究は,アトピー性皮膚炎患者では皮膚防御機能が著しく低い点に着目し,衣服の刺激によるかゆみの問題を,繊維の種類や織構造によって解決することを目的とした。まずアトピー患者を対象として,その症状について聞き取り調査を行った。これにより首や肘,膝の裏などといった汗のたまりやすい部位に症状が出やすく,同時にそれらの部位が人目につきやすいために気になっていることが確認できた。そこで7種類の異なる繊維を用い,これらをそれぞれ経糸と緯糸とした布サンプル計49種類を作成した。そしてこれらに5種類の既製品を加えた計54サンプルを対象として,被験者実験を実施した。これにより,竹レーヨンや絹などといったやわらかい糸を用いたサンプルの触り心地の評価が高いことが確認できた。さらに繊維の組み合わせや織り構造も,皮膚への刺激の程度を大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。そこで,これらの糸を組み合わせた布によって,症状が出やすい首や肘などの部位に着用するくるみ布を制作した.また糸を天然染料によって染めることによって治療の印象を低減させることを意図した。これらをアトピー患者に着用してもらい意見を収集したところ,触り心地の良さだけでなく,色や柄の美しさについても高い評価を得ることができた。