著者
田丸 浩
出版者
三重大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ゼブラフィッシュをモデル動物として、受精卵(1細胞)からの発生・分化過程という「時間的・空間的な動態」におけるミリスチル化脂質修飾酵素ならびにその標的タンパク質を介した時空間動態の定量的解析法の確立を目指した。最終年度となる今年度は、ミリスチン酸(myr)-グリシン(Gly)残基に対する抗体を作製し、ミリスチル化ペプチドに対する抗体の免疫学的力価の検討を行った。その結果、50ng以上のミリスチル化ペプチドに対して直線的な相関が得られた。さらに、大腸菌発現系を用いてゼブラフィッシュzNMT1遺伝子の組換え体酵素を精製し、標的ペプチドに対するミリスチル化の反応産物を質量分析器を用いてMyr付加の有無を検討した。その結果、組換えzNMT1は標的ペプチドをミリスチル化し、ミリスチル化ペプチドに予想通りの分子量の変動が確認された。最後に、ゼブラフィッシュ遺伝子発現系を用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるタンパク質間相互作用について検討を行った。当研究室で開発したpZexベクターならびに全身細胞で発現するpXIを組み合わせて、孵化腺細胞におけるFRETを観察した。その結果、受精後24-48時間において強いFRETが観察され、高等動物におけるタンパク質間相互作用解析が可能となった。今後は、発現が困難である膜タンパク質についてのミリスチル化とタンパク質間相互作用解析を組み合わせることで、タンパク質ミリスチル化が関与する生命現象の解明を進めていく予定である。