著者
矢下 博輝 楠 由希奈 小野田 尚佳 野田 諭 田内 幸枝 三木 祐哉 大澤 政彦 大平 雅一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1239-1243, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
7

症例は28歳,女性.1年間の無月経を主訴に近医を受診,テストステロン高値のため当院内科に紹介.165cm,55.2kg.陰核は軽度肥大,Cushing症候群を示す身体所見はなかった.血液検査では遊離テストステロン,dehydroepiandrosterone sulfateの異常高値を認めた.腹部造影CT検査で9×9×7.5cmの球状で境界明瞭な左副腎腫瘤を確認,内部は不均一な低吸収域を示した.リンパ節腫大や肺,肝転移は認めなかった.テストステロン産生左副腎癌疑いと診断し,開腹手術を行った.腫瘍は境界明瞭,周囲浸潤はなく被膜血流は豊富であった.剥離は容易で,中心静脈を結紮切離し,腫瘍を摘出した.病理組織では,核腫大や多核を伴う異型細胞が索状に増殖し,Weiss分類8/9,副腎皮質癌と診断した.経過良好で術後7日目に退院.退院後は明らかな転移再発はなく経過観察中である.