著者
真喜屋 清 田口 五弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.335-343, 1982
被引用文献数
1 9

越冬場所(第2次大戦中に使われた防空壕)におけるアカイエカの休止状況を写真撮影によって比較し, その分布様式, 集合の程度, 移動率の変化を推定すると同時に, 乾重量によって越冬前後の体重の変化を調べた。越冬蚊は, 壕内の3室のうちしだいに奥の部屋に移り, 奥の部屋の壁面ではより下方に集合するのが観察された。蚊の集合の程度は壕内の気温と湿度が低下するにつれて強くなり, 1月下旬に最大になった。壕内での蚊の移動は, 気温の低下とともに少なくなり, 気温の最も低い2月に最少になった。床からの高さによって分けた壁面の三つの部分のうち, 下方の壁面で蚊の移動は最も少なく, 越冬期間中の移動率は約70%であった。蚊の平均体重は, 越冬前の1.271mgにくらべて越冬後には0.708mgと著しく減少し, 平均減少率は44.3%であった。
著者
田口 五弘 真喜 屋清
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.33-39, 1982

ゲジThereuonema hilgendorfi Verhoeffが蚊の捕食者としてどの程度天敵の役割を果たしているかを知るために, いくつかの室内実験を行って, その活動時間およびいろいろな密度条件における捕食量を推定すると同時に, 野外で採集したものについて胃の内容物を調べた。すす紙についた足跡の数から見て, ゲジは夜間, とくに前半夜に活発に動きまわることがわかった。ゲジ(捕食者)にアカイエカCulex pipiens pallensを餌として与えた場合, 捕食される蚊の数(n)は経過日数(t)の指数関数n=N[1-exp(-a・t)]として表され, 餌密度(N)と捕食効率(a)によって捕食蚊数が変化することがわかった。捕食者と餌の密度をいろいろと変えて実験を行った結果, 捕食される蚊の数は捕食者の密度が同じ場合は餌密度が高いときに, また餌密度が同じならば捕食者密度が高いときに, それぞれ多いものと考えられ, 捕食蚊数は平均温度17.5∿25.0℃下でゲジ1匹1日あたり0.3∿1.3匹と推定された。11月に越冬アカイエカとゲジが棲息する防空壕からゲジを採集し胃の内容物を調べたところ, ほとんどのゲジから蚊の断片が見つかり, 平均2匹ほどのアカイエカが1匹のゲジによって捕食されていることがわかった。