著者
真喜屋 清 塚本 増久 堀尾 政博 黒田 嘉紀
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.203-209, 1988-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
5 7

福岡県遠賀郡岡垣町に在住の男性(55才)が, 鼻内異物感を伴う鼻出血と著しい鼻汁の分泌に悩まされた後, 昭和62年7月に右側鼻内から1匹のヒル(蛭)を取り出した. 病院受診時には鼻内所見で鼻中隔弯曲が見られた他は, 左右鼻腔内に潰瘍・糜爛や出血がなく, 耳内・口腔内にも異常は認められなかった. ホルマリン固定された虫体は, 黒褐色で体表には特定の模様がなく, 体長3.5cm, 最大体幅が1.2cmであった. また, 1)耳状突起がない, 2)5対の眼点は第3と第4眼点が1環節によって隔てられる, 3)額板には歯が認められない, などの特徴によって, ハナビルDinobdella feroxと同定された. このヒルは東南アジアに広く分布し, わが国でも人体寄生が知られているが, 九州では南九州からだけである. この患者は九州北部の温泉地で渓流水から感染したものと推察されるので, 温泉・秘湯ブームなどで渓谷にわけ入る風潮の盛んな昨今, 注意を払う必要がある.
著者
真喜屋 清 塚本 増久 堀尾 政博 黒田 嘉紀
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.203-209, 1988
被引用文献数
1 7

福岡県遠賀郡岡垣町に在住の男性(55才)が, 鼻内異物感を伴う鼻出血と著しい鼻汁の分泌に悩まされた後, 昭和62年7月に右側鼻内から1匹のヒル(蛭)を取り出した. 病院受診時には鼻内所見で鼻中隔弯曲が見られた他は, 左右鼻腔内に潰瘍・糜爛や出血がなく, 耳内・口腔内にも異常は認められなかった. ホルマリン固定された虫体は, 黒褐色で体表には特定の模様がなく, 体長3.5cm, 最大体幅が1.2cmであった. また, 1)耳状突起がない, 2)5対の眼点は第3と第4眼点が1環節によって隔てられる, 3)額板には歯が認められない, などの特徴によって, ハナビル<i>Dinobdella ferox</i>と同定された. このヒルは東南アジアに広く分布し, わが国でも人体寄生が知られているが, 九州では南九州からだけである. この患者は九州北部の温泉地で渓流水から感染したものと推察されるので, 温泉・秘湯ブームなどで渓谷にわけ入る風潮の盛んな昨今, 注意を払う必要がある.
著者
真喜屋 清 岩尾 憲三
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.241-247, 2001
被引用文献数
1

New mosquito traps were devised : electroshock and adhesive traps using carbon dioxide and heat for attracting and killing mosquitoes. The electroshock trap is supplied with carbon dioxide by a portable cylinder and with heat and high voltage by electric power. The adhesive trap is supplied with carbon dioxide by dry ice and with heat by heating chemical (hand warmer). Outdoor experiments were carried out in August and September in a shrine of Kitakyushu City, Japan and in February in the outskirts of Bangkok City, Thailand. A total of 899 mosquitoes were collected with 2 or 3 adhesive traps in 4 nights in Kitakyushu (maximum of 213,minimum of 24 and average of 89.9 mosquitoes per trap-night), and Aedes albopictus accounted for 99% of the captured mosquitoes. As many as 5,408 mosquitoes were captured with 3 adhesive traps in 4 nights in Bangkok (maximum of 1,003,minimum of 114 and average of 450.7 mosquitoes per trap-night), and most (99%) of the captured mosquitoes were identified as Culex quinquefasciatus. A total of 8,133 mosquitoes were captured with 2 electroshock traps in 4 nights in Bangkok (maximum of 1,519,minimum of 1,031 and average of 1,293.8 mosquitoes per trap-night).
著者
真喜屋 清 田口 五弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.335-343, 1982
被引用文献数
1 9

越冬場所(第2次大戦中に使われた防空壕)におけるアカイエカの休止状況を写真撮影によって比較し, その分布様式, 集合の程度, 移動率の変化を推定すると同時に, 乾重量によって越冬前後の体重の変化を調べた。越冬蚊は, 壕内の3室のうちしだいに奥の部屋に移り, 奥の部屋の壁面ではより下方に集合するのが観察された。蚊の集合の程度は壕内の気温と湿度が低下するにつれて強くなり, 1月下旬に最大になった。壕内での蚊の移動は, 気温の低下とともに少なくなり, 気温の最も低い2月に最少になった。床からの高さによって分けた壁面の三つの部分のうち, 下方の壁面で蚊の移動は最も少なく, 越冬期間中の移動率は約70%であった。蚊の平均体重は, 越冬前の1.271mgにくらべて越冬後には0.708mgと著しく減少し, 平均減少率は44.3%であった。
著者
真喜屋 清 石黒 虎男 高橋 美和子 大橋 昭任 竹下 三喜男 彭城 郁子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.39-46, 1986-03-01

水田皮膚炎の原因となる烏類住血吸虫セルカリアの中間宿主ヒメモノアラガイについて, 乾燥した水田の稲株で越冬する集団, 初夏の水田で越冬貝がら発育した大型貝集団および産卵後に生じた新生貝集団の水田内における分布様式を明らがにすると同時に, 越冬集団の分布を左右する土壌水分量および土壌粒子の組成との関連について解明した. 越冬貝, 大型貝および新生貝の各集団とも水田内では均一に分布せず負の二項型に適合する集中性の不均一な分布をし, 集中度は新生貝>越冬貝>大型貝個体群の順に強かった. 分布様式と集中度から考えると, 翌春水が張られた後稲株から出た越冬貝集団がこの水田の中央部寄りで成熟, 産卵後に分散して行き, 水田周縁部に集まったものと考えられた. 秋の繁殖期に産出された稚貝は, 土壌水分のより多い場所を選び稲株の地下茎に潜入することによって, 乾燥した冬の水田で生きのびるものと考えられ, また,水分の多い場所の土壌はそうでない場所に比べて細砂の割合が高く, 粗砂の少ない組成をしていた.(1985年11月5日 受付)
著者
真喜屋 清 塚本 増久 真鍋 英夫 浅野 茂利 岩田 康
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.227-232, 1987-06-01
被引用文献数
1

北九州市に住む50才の男性が集団検診で胸部の異常陰影を指摘され, 気管支鏡・x線などによる精査の結果肺癌の疑いで入院した. 開胸手術により摘出ざれた病巣は10.6×95mmの楕円形で境界が鮮明な肺組織の壊死と異物による肉芽腫であっで, 血管腔内に虫体の断面が確認された. 2個の線虫断端の径は216-240×296μmで角皮は少なくとも3層から成り, 角皮の外側には縦走隆起がなく, 内側に縦走隆起の横断像が認められた. 側索は筋層の高さに達し, 多数の筋細胞(1 quadrant 当り30個以上)が見られた. このような虫体断端の大きさと形態的特徴から大糸状虫Dirofilaria immitisの未成熟虫と判走され, 0uchterlony法と免疫電気泳動法を用いた免疫学的診断でもこの結果と一致したため, 本症は大糸状虫による肺肉芽腫と診断された. 患者の自宅周辺で媒介蚊の調査を行ったところヒトスジシマカが多く, この蚊の大糸状虫媒介の可能性について考察した.(1987年2月16日 受付)
著者
真喜屋 清 塚本 増久 真鍋 英夫 岩田 康
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.325-330, 1988-09-01

最近大糸状虫人体寄生例の報告が増加の傾向を示しているが, 昨年報告した北九州市で最初の肺大糸状虫症に引き続いて同市内で再び大糸状虫の肺寄生例を経験した. 患者は市内八幡西区に住む56才の女性. 昭和62年6月に胸部の異常陰影を指摘され, 重症筋無力症を伴う縦隔腫瘍の診断で胸腺摘出術を受けた際, 偶然左肺下葉に小結節を発見・切除されたが, 肺組織の懐死層を含むこの肉芽腫瘤内に寄生虫の断端像を認めた. 断端の径は400×310μmで, 角皮最外層には縦走隆起がなく最内層内側に隆起がある. 側索は狭小で筋層の高さに達し, 筋細胞はpolymyarian typeである. 以上の形態的特徴から, 大糸状虫Diofilaria immitis未成熟虫と同定された. 本症例は開胸手術中に偶然発見されたもので, 無症状の大糸状虫症は報告された例数よりも実際にはさらに多いということをうかがわせる(1988年5月16日 受付)
著者
真喜屋 清 堀尾 政博 塚本 増久
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.43-52, 1990-03-01

皮下末梢血における糸状虫ミクロフイラリア(Mf)の分布様式を明らかにし, 吸血蚊への取り込み数を検討するために, ネッタイシマカに大糸状虫感染大を吸血させる実験を行った. 体表の約50カ所を剃毛した感染大を麻酔して吸血させ, 吸血前後の蚊の体重を正確に秤量することによって, 蚊1匹当りのMf取り込み数と, 単位吸血量1mg当りのMf取り込み密度とを調べた. Mf取り込み密度は吸血部位によって著しいばらつきを示し, 負の二項分布に適合する集中型の分布をするものと推定された. 吸血場所によってはMf取り込み密度に有意差が認められたが, 繰り返し実験では再現性のある結果が得られないことから, 吸血場所間のこの差異は一貫性のあるものではないと推察された. 蚊の吸血量が増加すると, 蚊1匹当りのMf取り込み数が増えるだけでなく, Mf取り込み密度も高くなるのが観察された. 同一の部位で別の蚊に取り替えて吸血させた実験でも, Mf取り込み密度は蚊の吸血量が多い時に高くなるのが認められた.(1989年8月15日 受付, 1989年12月14日 受理)