著者
田口 智久 志賀 博 小林 義典 荒川 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-21, 2003

咀嚼運動の安定性の定量的評価に際し, グミゼリー咀嚼時の最適な分析区間を明らかにする目的で, 健常者20名にグミゼリーを主咀嚼側で20秒間咀嚼させ, 咀嚼開始後の第1サイクルから第30サイクルまでの30サイクルにおける咀嚼開始後の1サイクルごとに順次起点とした各連続10サイクル (第1~第21シリーズ) の運動経路と運動リズムの安定性について, シリーズ間で定量的に比較し, 以下の結論を得た.<BR>開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分の各SD/OD (標準偏差を開口量で除した値) の平均値は, 開口時側方成分では, 第6シリーズ, 閉口時側方成分と垂直成分では, 第5シリーズで最小値を示した. 開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, サイクルタイムの各変動係数の平均値は, 開口相時間とサイクルタイムでは, 第5シリーズ, 閉口相時間では, 第6シリーズ, 咬合相時間では, 第7シリーズで最小値を示した. また, 第5シリーズの各指標値は, 第6シリーズと第7シリーズの各指標値に近似した. これらのことから, グミゼリー咀嚼時の咀嚼運動は, 開始後の第5シリーズ, すなわち咀嚼開始後の第5サイクルからの10サイクルが最も安定し, 咀嚼運動の安定性の定量的評価のための最適な分析区間であることが示唆された.