著者
香川(田中) 聡子 中森 俊輔 大河原 晋 岡元 陽子 真弓 加織 小林 義典 五十嵐 良明 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.2003146, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因,あるいは増悪因子となることが指摘されているが,そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。イソチアゾリン系抗菌剤は塗料や化粧品・衛生用品等様々な製品に使用されており,塗料中に含まれるこれら抗菌剤が室内空気を介して皮膚炎を発症させる事例や,鼻炎や微熱等のシックハウス様症状を示す事例も報告されている。本研究では,侵害受容器であり気道過敏性や接触皮膚炎の亢進にも関与することが明らかになりつつあるTRPイオンチャネルに対するイソチアゾリン系抗菌剤の活性化能を検討した。【方法】ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて,細胞内Ca2+濃度の増加を指標としてイオンチャネルの活性化能を評価した。Ca2+濃度の測定にはFLIPR Calcium 5 Assay Kitを用い,蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。【結果および考察】2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one (OIT)がTRPV1の活性化を引き起こすことが明らかになった(EC50:50 µM)。また,TRPA1に関しては,2-methyl-4-isothiazolin-3-one (MIT),5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one (Cl-MIT),OIT,4,5-dichloro-2-n-noctyl-4-isothiazolin-3-one (2Cl-OIT)及び1,2-benzisothizolin-3-one (BIT)が顕著に活性化することが判明し,そのEC50は1~8 µM (Cl-MIT, OIT, 2Cl-OIT, BIT)から70 µM (MIT)であった。これらの物質が,TRPV1及びA1の活性化を介して気道過敏性の亢進等を引き起こす可能性が考えられる。諸外国においてはこれら抗菌剤を含む製品の使用により接触皮膚炎等の臨床事例が数多く報告されており,我が国でも近年,冷感効果を謳った製品の使用による接触皮膚炎が報告され,その原因としてイソチアゾリン系抗菌剤の可能性が指摘された。これら家庭用品の使用により,皮膚炎のみならず,気道過敏性の亢進等シックハウス様の症状が引き起こされる可能性も考えられる。
著者
小林 義典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.192-194, 2015 (Released:2016-03-11)
参考文献数
8
著者
小林 義典 松本 敏彦 石上 惠一 平井 敏博
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-23, 1996-02-01
参考文献数
139
被引用文献数
60 9

咬合と全身の機能との関係について,過去5年間に本学会学術大会および本誌で報告された内容のうち,特に咬合間題が聴能力,重心動揺,眼振図,聴性脳幹反応,咀咽系の機能,自律神経系の機能,情動,睡眠に及ぼす影響,ならびに咬合接触が身体運動機能に及ぼす影響を分析したデータを考察し,解説を加えた.その結果,咬合問題は,中耳伝音系機能,平衡感覚,聴性脳幹反応,自律神経系の機能,情動,睡眠に影響を及ぼし,また咬合機能は,身体運動機能に密接に関連することが検証された.
著者
小林 義典 松本 敏彦 石上 恵一 平井 敏博
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-23, 1996-02-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
139
被引用文献数
12 9

In order to verify the relation between the body function and occlusion, the gravity function, electronystagmography, and auditory brainstem response of TMD patients, edentulous patients and healthy subjects with 500 μm thick experimental occlusal interference were analyzed, and it was confirmed that occlusal problems impede the auditory system, body's posture adjusting system and vestibule system. Further, when the relation between the occlusal contact and the bodily motor function were compared between healthy subjects and patients whose occlusion had been treated, it was confirmed that there was close relation between the two.Furthermore, from the analysis of human body phenomena of healthy subjects with 100 μm thick experimental occlusal interference, it was confirmed that occlusal problems induced bruxism or continuously aggravated the problem and eventually entailed TMD, as well as changed the function of the autonomic nervous system and provoked emotional stress and sleep disorders.From these results, it was verified that occlusal problems affected the function of the middle ear transmission system, equilibrium sense, auditory brainstem response, function of autonomic nervous system, emotion and sleep and that the occlusal function was closely related to the bodily motor function.
著者
小林 義典 長谷川 亮平 五十川 みさき
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.265-271, 2008 (Released:2009-01-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

新潟の伝統野菜“かきのもと”は,食用菊Chrysanthemum morifolium Ramat. forma esculentum Makinoの一種である。本研究では,食用菊の消化管運動および消化吸収に及ぼす影響を検討することを目的とした。食用菊“かきのもと”花弁の熱水抽出物を油脂・ショ糖混合溶液に10 w/v%添加し,マウスに経口投与したところ,消化管内容物の胃滞留時間の短縮,消化管移行の亢進,トリグリセライドの吸収抑制および血糖値上昇の抑制が認められた。次に,ラット小腸由来α-グルコシダーゼへの影響を検討したところ,食用菊花弁熱水抽出物は強い阻害活性を示し,スクラーゼ,マルターゼに対する50%阻害濃度は,それぞれ34.6,20.0 mg/mLであった。また,ヒトにおける50 gショ糖負荷試験(11名)において,食用菊“かきのもと”凍結乾燥粉末10 w/v%添加したショ糖溶液では,負荷後15分および30分での血糖値上昇の抑制,および負荷後から60分までの血糖値変化量の曲線下面積(ΔAUC)の積分値の減少を認めた。以上の結果から,食用菊“かきのもと”が血糖値上昇抑制作用を有する機能性食品素材として有望であることが示唆された。
著者
小田口 浩 日向 須美子 関根 麻理子 中森 俊輔 竹元 裕明 黄 雪丹 大嶋 直浩 嶋田 典基 楊 金緯 天倉 吉章 日向 昌司 内山 奈穂子 小林 義典 袴塚 高志 合田 幸広 花輪 壽彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.11, pp.1417-1425, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
21
被引用文献数
8 13

Ephedra Herb is defined in the 17th edition of the Japanese Pharmacopoeia (JP) as the terrestrial stem of Ephedra sinica Stapf., Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer, or Ephedra equisetina Bunge (Ephedraceae). The stems of Ephedra Herb contain greater than 0.7% ephedrine alkaloids (ephedrine and pseudoephedrine). Despite its high effectiveness, Ephedra Herb exert several adverse effects, including palpitation, excitation, insomnia, and dysuria. Both the primary and adverse effects of Ephedra Herb have been traditionally believed to be mediated by these ephedrine alkaloids. However, our study found that several pharmacological actions of Ephedra Herb were not associated with ephedrine alkaloids. We prepared an ephedrine alkaloid-free Ephedra Herb extract (EFE) by eliminating ephedrine alkaloids from Ephedra Herb extract (EHE) using ion-exchange column chromatography. EFE exerted analgesic, anti-influenza, and anticancer activities in the same manner as EHE. Moreover, EFE did not induce adverse effects due to ephedrine alkaloids, such as excitation, insomnia, and arrhythmias, and showed no toxicity. Furthermore, we evaluated the safety of EFE in healthy volunteers. The number of adverse event cases was higher in the EHE-treated group than in the EFE-treated group, although the difference was not significant. Our evidence suggested that EFE was safer than EHE.
著者
田口 智久 志賀 博 小林 義典 荒川 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-21, 2003

咀嚼運動の安定性の定量的評価に際し, グミゼリー咀嚼時の最適な分析区間を明らかにする目的で, 健常者20名にグミゼリーを主咀嚼側で20秒間咀嚼させ, 咀嚼開始後の第1サイクルから第30サイクルまでの30サイクルにおける咀嚼開始後の1サイクルごとに順次起点とした各連続10サイクル (第1~第21シリーズ) の運動経路と運動リズムの安定性について, シリーズ間で定量的に比較し, 以下の結論を得た.<BR>開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分の各SD/OD (標準偏差を開口量で除した値) の平均値は, 開口時側方成分では, 第6シリーズ, 閉口時側方成分と垂直成分では, 第5シリーズで最小値を示した. 開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, サイクルタイムの各変動係数の平均値は, 開口相時間とサイクルタイムでは, 第5シリーズ, 閉口相時間では, 第6シリーズ, 咬合相時間では, 第7シリーズで最小値を示した. また, 第5シリーズの各指標値は, 第6シリーズと第7シリーズの各指標値に近似した. これらのことから, グミゼリー咀嚼時の咀嚼運動は, 開始後の第5シリーズ, すなわち咀嚼開始後の第5サイクルからの10サイクルが最も安定し, 咀嚼運動の安定性の定量的評価のための最適な分析区間であることが示唆された.
著者
小林 義典
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.104-108, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
25

従来、麻黄の活性本体はエフェドリンであり、他の化合物の寄与は少ないと考えられてきた。しかし、動物実験での経口投与における鎮痛作用や抗炎症作用には高分子縮合型タンニン(EMCT)の寄与が大きいことが明かとなった。このEMCTを含有するエフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)は古典的な薬能を有し、エフェドリンによる副作用やうっかりドーピングの心配がない安全な麻黄製剤の原料として有望である。
著者
岡崎 怜子 宮内 靖史 小林 義典 丸山 光紀 岩崎 雄樹 平澤 泰宏 阿部 純子 谷口 宏史 堀江 格 舘岡 克彦 上野 亮 小鹿野 道雄 篠田 暁与 小原 俊彦 平山 悦之 加藤 貴雄 高野 照夫 新田 隆 大森 裕也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.115-122, 2005

症例は74歳,女性.70歳時に僧帽弁置換術および慢性心房細動に対しradial手術施行.手術2カ月後より周期220msの心房頻拍(AT)が持続.AT中,冠静脈洞(CS)の興奮順序は遠位から近位であり,CS内広範囲でpost-pacing interval(PPI)が頻拍周期にほぼ一致するconcealed entrainment(CE)を認めたことから僧帽弁輪を旋回するATと考えた.左房後壁切開線が接合する僧帽弁輪部直下のCS内部にて波高の高い電位が記録され,PPIが頻拍周期に一致するCEを認めた.同部位における高周波通電開始4秒後に頻拍は停止し,以後誘発不能となった.通電部位より2mm近位部でのペーシングで1cm遠位部への伝導時間が200msとなったことからこの通電で左房後壁切開のブロックが完成したと考えた.術中完全に凍結し得なかったCS筋層を介する伝導が頻拍発生の原因と考えられたradial術後ATを経験したので報告する.
著者
淀川 顕司 森田 典成 小林 義典 小原 俊彦 村田 広茂 高山 英男 清野 精彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.1, pp.S1_19, 2012 (Released:2013-08-23)

[背景・目的] Brugada症候群と不整脈源性右室心筋症(ARVD)はともに加算平均心電図における心室遅延電位(LP)が高率に検出されるが,そのLPの形態に着目すると,ARVDでは高周波成分で形成されるのに対し,Brugada症候群では比較的低周波成分で形成されることが多い.そこで,われわれは,QRS波の周波数解析を行うことにより両者の周波数特性を検討した.[対象と方法] 特発性右室流出路起源心室頻拍(RVOT-VT)20例,Brugada症候群10例,ARVD 10例.全例で心電図Z誘導QRS波をガボール関数を用いてウェーブレット変換し,各周波数帯でのピークのパワー値,および総パワー値を比較.[結果] Brugada症候群では80Hzを中心に,ARVDでは150Hzを中心にQRS内部に高周波成分が発達していた.高周波帯の中で最大パワーを有する周波数はBrugada症候群に比し,ARVDで有意に高かった(81.7± 19.9Hz vs 145.4± 27.9 Hz,p[結論] 心電図QRS波の周波数解析において,周波数特性は,Brugada症候群とARVDで明らかに異なる.
著者
袁 方 小林 義典 安藤 俊幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第13回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.77-82, 2016 (Released:2016-11-17)
参考文献数
5

昨今、中国での特許出願件数は世界第一位に成長するとともに、在華企業による出願も顕著になり、かつ国内の市場規模も依然巨大であることから、中国特許に対する注目度は年々高くなってきている。 日本企業のみならず中国マーケットで事業を行う企業にとっては如何に効率的に膨大な特許情報を読み解くかが重要課題のひとつであり、そのソリューションのため「商用」も含め様々なツールの開発が加速されている。 本報では、それらの分析ツールの中から、中文テキストマイニング機能を有し、ランドスケープ図などの可視化機能を有するとともに、日文・英文での特許分析での実績があり、かつ中国語分析機能が追加された「KHCoder」にフォーカスし、その実務視点での利用可能性評価について論じる。 対比評価においては、既に全件内容を確認済みの中国特許を母集合として用い、精度、活用性等の観点で評価を行った。 またKHCoder等を用いて特定対象分野の特許に対して分析を行い、実務面でどのような分析ができるのかについて検討した結果について紹介する。特に1種類の分析ツールだけではなく、その組み合わせにより、より効果的な分析が出せないか、実務上有益な情報が引き出せないか、について検討した。
著者
小林 義典
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.189-219, 2011-07-10 (Released:2011-09-01)
参考文献数
370
被引用文献数
2 7

軟らかくて咀嚼回数が少ないファーストフードや健康補助食品の多量摂取,朝食の欠食などによる不十分な咀嚼は,激変した社会環境を背景として健康に多大な影響を及ぼしている.一方,近年の研究では,食の文化に基づいた歯応えと風味がある食物の十分な咀嚼は,心身の成長の促進,脳の活性化とリラックス作用,食物の発がん物質の発がん性の減弱,活性酸素の消去,肥満の抑制,糖尿病治療効果の向上,運動機能の向上,骨粗鬆化の抑制,脳の損傷や老化のリハビリテーション効果などにつながることが確認または示唆されている.また,この前提条件として,健全な咬合の必要性が強調されている.今後の健康,医療,福祉を展望すると,歯科臨床が主な目的とする咀嚼機能の回復とその維持は不可欠であり,それを標榜してきた日本補綴歯科学会には,重大な責務があるといえよう.具体的に,科学的根拠に基づいた行政施策が実施されるためには,咀嚼機能の診断の確立とその呈示とともに,医学,栄養学,薬学,理工学などとの密に連携した研究と臨床の推進が必須であり,特に広範な領域を専門とする日本補綴歯科学会の担う役割は重大である.
著者
小林 義典
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 = The Journal of Japanese Society of Stomatognathic Function (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.95-120, 2009-02-28
参考文献数
322
被引用文献数
3

増大かつ持続する睡眠時ブラキシズムは,口腔領域あるいは一部関連する領域の問題ではなく,睡眠や自律機能に関連する重大な生体の問題として考えなければならない.また,睡眠時無呼吸症候群の歯科的なアプローチは,医科の専門領域との連携が必須であり,慎重な対応が必要である.本稿で示した今までの研究と臨床の知見は,口腔感覚が睡眠時ブラキシズムと睡眠時無呼吸の種々な部分で重大な役割を演じている可能性を示唆している.これらを脳・睡眠・疼痛のメカニズムに関連づけて究明すべく,分析を進めれば,睡眠時ブラキシズムと睡眠時無呼吸の解明の緒となる貴重な資料を提供してくれるだろう.
著者
安井 仁 清水 正啓 山田 明 前田 知行 小林 義典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.148-152, 1991-01-01
被引用文献数
14

過去18年間に上行結腸癌, 早期胃癌, 直腸癌および残胃癌の消化管領域に限局した異時性4重複癌が発生し, そのおのおのに右半結腸切除術, 幽門側胃切除術, 腹会陰式直腸切断および残胃全摘除術の根治手術を施行しえた75歳, 男性の症例を経験した. 患者はおのおのの手術後, 再発なく社会復帰を果たすことができた. 本症例は当院において長期に経過観察する過程で比較的早期に発見され, すべて根治手術が可能であった. 重複癌発生の特殊要因は認めなかった. 4・5重複癌は臨床例, 剖検例をあわせて本邦で107例報告されているが, このうち消化器に限局したものは15例である. 本邦における剖検重複癌の統計的検討を行った. 重複癌の悪性腫瘍に占める頻度は10年間で倍増しており, かつ4重複以上の高次重複癌が増加する傾向があるので, 術前・術後の他臓器原発癌に対する配慮が重要である.
著者
志賀 博 小林 義典 荒川 一郎 横山 正起 雲野 美香
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-29, 2005-10-30

目的: 食品の味の違いが咀嚼時の脳内血流に及ぼす影響を明らかにする目的で, 健常者に味の異なるグミゼリーを咀嚼させた時の脳内血流について分析した.方法: 健常者10名(男性5名, 女性5名, 22〜34歳, 平均年齢24.8歳)に味の異なる3種類のグミゼリー(普通, 甘い, 苦い)を主咀嚼側で20秒間咀嚼させた時の両側の脳内血流を浜松ホトニクス社製近赤外分光装置NIRO-300^[○!R]を用いて記録した.なお, 近赤外分光装置の測定プローブは, 照射部と受光部の距離を4cmとし, 両側の咀嚼運動野相当部の皮膚上に毛髪をかき分けて, 開閉口運動に最も反応する位置に設定した.分析は, はじめに各グミゼリーの咀嚼前, 咀嚼中, 咀嚼後の脳内血流の経時的変化を調べた.次いで, 咀嚼前と咀嚼中との脳内血流の変化量について, 食品間で比較した.結果: 脳内血流は, いずれのグミゼリーでも咀嚼中に有意に増加したが, 咀嚼終了後に減少し, 咀嚼前の状態に回復する傾向を示した.また, 脳内血流量は, 苦いグミゼリー咀嚼時が最も少なく, 甘いグミゼリー咀嚼時, 普通のグミゼリー咀嚼時の順に多くなり, 食品間に有意差が認められた.結論: 脳内血流は, 咀嚼運動によって増加すること, また食品の味の違いは, 脳内血流の増加の大小に影響を及ぼすことが示唆された.