著者
島 洋一郎 大貫 朗子 佐藤 晴哉 田名部 逸也 前田 和哉 杉山 雄一
出版者
日本薬物動態学会
雑誌
日本薬物動態学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75, 2003

(目的)human OATP2(hOATP2/SLC21A6)は、肝臓特異的に発現するトランスポーターであり基質特異性の広範さから医薬品を含む有機アニオンの肝取り込みに重要な役割を果たしていると思われる。サルは、遺伝的にはヒトに比較的近い実験動物であり、薬物動態・毒性学的解析において繁用されている。サルでのhOATP2ホモログ(mkOATP2)を単離、機能解析することは、ヒトにおけるトランスポーターを介した肝取り込みの予測に、サルを用いることの妥当性の評価につながると考え、本研究を行った。(方法)カニクイザルの肝臓よりcDNAを調製し、hOATP2, rat Oatp4遺伝子のアミノ酸レベルで相同性の高い領域からプライマーを設計し、RT-PCR法によりクローニングを行った。単離したmkOATP2を哺乳類発現ベクターに導入して、HEK293細胞で安定発現系を構築し、hOATP2発現系とともに、標識体の取り込みを観察することで輸送能を評価した。(結果・考察)単離されたmkOATP2は、全長2073bpの翻訳領域をもち、hOATP2と遺伝子レベルで96%, アミノ酸レベルで92%と高い相同性を示した。また、発現細胞系への取り込み実験からestradiol-17b-glucuronide(E217bG)並びにestrone-3-sulfate(E-sul)の輸送が明確に見られ、それぞれの親和定数(Km)は、約3mM, 0.2mMと算出されたことから、本遺伝子はhOATP2のホモログであると推定された。また、rifampicin, pravastatin, glycyrrhezin, enalaprilなどの薬剤はhOATP2, mkOATP2を介したE217bGの取り込みをいずれも阻害し、そのIC50 値は、ヒト、サル間で比較的良好な相関が見られたことから、両トランスポーター性質の類似性が示唆される結果を得た。現在さらなる基質認識性に関する検討を行い、両トランスポーターの特徴の類似・相違性を調べる予定である。